ひとつ、ふたつ、ひみつ。
ドッ、ドッ、ドッ。

心臓が、小刻みに胸の内側を叩く。

「……は?」

振り向いたあっくんの顔は、“理解が追いつかない”。そんな表情で。

「私、あっくんとはもう、ふたりで登下校は出来ない……」

「なんで?」

「っ!」

グッと手首をつかまれて、痛みで眉根を寄せる。

あっくんはよくイライラしているけど、いつもとは違う。
怖いくらいに、怒っている。

「誰かに、また何か言われたのか」

“また”。それは、あっくんの幼なじみでいることで、私が女子の嫉妬の標的になってしまうこと。
そのたびに、私があっくんから離れようとしていたから。

「ううん、違う。それは、関係ないよ……」

「じゃあ、なんだよ」

「好きな人が、いるから」

あっくんの目が見開いて、腕をつかむ力が少しゆるむ。

「……好きな人?」

「好きな人に、勘違いされたくないの。だから……」
< 239 / 266 >

この作品をシェア

pagetop