冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「だって、ずっと心配してたから。離婚した後のあなたの顔思い出したら、自然とそんな言葉も出てくるわよ。なんとかしなきゃって、私が思うくらいだったんだから」
そこまで過保護に育てられたわけでもなく、母はどちらかといえば私に自由にやらせてくれるタイプの親だった。
そんな母にこう言わせてしまうほど、離婚当初の私は酷かったのだろう。
不幸のどん底に落ちてしまった娘を、なんとか元に戻したい。幸せになってもらいたい。
その思いが強く、きっと縁談も考えてくれたのだろう。
まだ親になったことのない私にはわからない感情もあるけれど、母なりに心配や不安を抱えていたのだと思う。
そしてなにより、私の幸せを願ってくれているのが伝わる。
「でも、素敵な人に出会って、人生やり直せそうなら安心よ」
「お母さん……」
「静かに、応援してるからね」
どうしてもモヤモヤした気持ちになってしまう。
私と裕翔さんが現実的にどうにかなるのは有り得ない。
だけど、こうして安心してくれた母を前にすると、一日でも長く穏やかな気持ちでいてほしいと切に思う。
波風を立てず、このままフェードアウトしていくように終わっていけば、きっと……。
「うん、ありがとう」
具体的になにかを約束するようなことは言えない。
感謝の気持ちに、心配しないでという想いを込めていた。