神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
しかし、エリトールさんは頭を振った。

「そのようなことはありません。ルイーシュ様は立派な上級魔導師様なのですから。お側にお仕えさせていただくだけで、学ぶことは充分にあります」

「…」

立派な上級魔導師様、ねぇ…。

上級魔導師様だから立派なのか、立派だから上級魔導師様なのか…。

まぁ、俺から何かを学べると思うなら、勝手に学べば良いですよ。

何も学べなかったとしても、責任は取れませんけどね。

「エリトールさん。あなたも魔導師なんですよね?」

「はい、そうです」

ですよね。銀色の証明書をぶら下げてますし。

「上級魔導師に仕える見習い魔導師なんですから、きっと、さぞや優秀な魔導師なんでしょうね」

「いえ、そんな…。ルイーシュ様の足元にも及びません」

「そんなことないですよ」

真面目に朝起きて、こうして夜まで働いている時点で。

あなた、俺の足元に及ばないどころか、俺の背丈すら通り越してますよ。

それでも、エリトールさんは謙虚なのか。

「いいえ、本当に…。ルイーシュ様には、まるで敵いません」

「…どうしてそう思うんですか?」

「…。…ルイーシュ様は、空間魔法専門の魔導師様でいらっしゃるんですよね?」

と、エリトールさんは尋ねてきた。

「えぇ、そうですけど…」

「実は…。私も、空間魔法には、多少心得がありまして…」

へぇ。意外な共通点。

…いや、意外でもないか。

空間魔法に心得がある…だからこそ、エリトールさんが俺の専属見習い魔導師に選ばれたんだろう。

ってことは、キュレムさんのところの…ブラマンジュさん、でしたっけ?

彼女はマギアシューターなんですかね。知らんけど。

「勿論、私の空間魔法は、ルイーシュ様には遠く及びませんが…」

「そうですか」

「ルイーシュ様がルーデュニア聖王国にいらっしゃった頃に書かれた著書を、以前拝読させてもらったことがあります」

…へぇ。

そういえば、書いたことありますね。空間魔法に関する著書…。

とはいえ、そんな大層なものじゃない。

単なる思いつきを、つらつらと書き流しただけ。

暇潰し感覚で書いた魔導書だ。

あれを魔導書と呼ぶのもおこがましい。

学院長は感心してましたけど。
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