神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
「…貴様らがどういうつもりで、今、ここに…キルディリア魔王国にいるのか、俺の知ったことではない」

呆然としている俺に、ナツキ様が言った。

「だがもし、まだ貴様らがルーデュニア聖王国と繋がっているのなら…。祖国を守る気が少しでもあるのなら、頼む。…俺が生きていることを、何とかしてアーリヤット皇国に伝えてくれ」

「…」

出来る訳ないだろそんなこと。

…と、言いたかった。

「俺が生きていることが分かれば、アーリヤット国民は一つにまとまるはずだ。キルディリアの支配になど甘んじるはずがない」

「…それは…」

「このままアーリヤット皇国が、完全にキルディリアの支配下に落ちれば、間違いなく、次はルーデュニア聖王国だ」

「…!」

「あの女は必ず、ルーデュニア聖王国を…そして、シルナ・エインリーを手中に収めようとするだろう。その為に手段は問わない」

…だろうな。

既に、『アメノミコト』…暗殺者集団まで雇って、戦争を仕掛けてきたのだから。

「そうなっても良いのか?…祖国が灰に焼かれ、キルディリアの魔の手に落ちても良いのか」

良い…訳が無い。

…良い訳が無いだろ。

「そうなる前に、誰かが止めなくてはならない。それが出来るのは今、貴様らをおいて他に…」

…と、言いかけたその時が。

時間切れ、だった。

「時間です。面会を終了します」

制限時間の10分が過ぎて、険しい顔をしたシディ・サクメが戻ってきた。

…畜生、この男。

タイミング、わざと測ってたんじゃないだろうな?

「…」

サクメが再び現れたのを見て、ナツキ様は口を真一文字に閉じて、また黙り込んでしまった。

「ちょっと…ちょっと待ってくれ。まだ…!」

「面会は終わりです。お二人共、退室してください」

おい。なんだそれは。

一方的に連れてきておいて、もう用は済んだから帰れ、って?

そんな勝手な言い分が…!

…しかし。

「キュレムさん、ここは堪えてください」

俺よりずっと冷静なルイーシュが、俺を制した。

う…ぐぬぬ。

でも、確かに。

シディ・サクメの前では、ナツキ様と会話は出来ない。

…ここは潔く、引くしかない。

「…畜生…」

俺はもごもごと、誰にも聞こえないように小声で呟いた。

今ここに、ナツキ様というキーパーソンがいるのに。

『アメノミコト』の戦争への介入という、重要な新情報も手に入れたのに。

この状況で「何か」が出来るのは、俺達だけだって、分かってるのに。

今はただ、潔く引き下がることしか出来ない。

そんな無力な自分が、なんとも歯痒かった。
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