神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…こんな時に、おやつとは。

それどころじゃないだろ。

…と、言いそうになったが。

そういやシルナ・エインリーも、いざって時にはいつも、チョコを食ってるよな。

「頭を働かせる為に、糖分が必要!」…とか言いながら。

頭を働かせてない時でも、あいつはいつもチョコばっかり食べてるようだがな。

って、羽久・グラスフィアが呆れてた。

「…これも、部下と一緒に買いに行ったのか?」

「うん。ビスッコ、特売だったの」

「ふーん…」

それは良かったな。

ベリクリーデが買ってきたのは、某ビスケット菓子。

ビスッコ、メープル味。

…ベリクリーデにしては、なかなかオーソドックスなチョイスじゃないか。

ノーマルも美味しいし、最近台頭してきたバター味も捨て難いが。

メープル味も、定番の味だよな。

ほんのりと香る、甘いメープルの風味が癖になる。

子供から大人まで、誰もが好きな味だ。

勿論、俺も好きだ。

でも…。

「ベリクリーデなら、いちご味の方が好きだったんじゃないのか?」

「え?うん…」

「買わなかったのか。それとも、いちご味はなかったのか?」

特売だったから、既に売り切れていた説。

…しかし、そうではなかった。

「ううん。あったよ」

え、あったの?

「普通の、赤と白のやつと…」

ノーマルの味だな。

「いちご味と、メープル味と…それから、どらごんず・ぶれす味っていうのが売ってたんだけど」

「ぶっ…!?」

…おい、ちょっと待て。

今、さらっととんでもないことを言わなかったか?

「赤くて可愛かったから、どらごんずぶれす、っていうのを買おうと思ったんだよ」

「…でも、部下に止められたんだな?」

「うん、そうなの。ジュリス、よく分かったねー」

「まぁな…」

「名探偵ジュリスだ」

「いや…さすがに三度目となると…」

分かるよ。

あっ、これまたあのパターンか。ってなるよ。

俺だって馬鹿じゃないからな。…お前と違って。

どらごんずぶれす…。ドラゴンズ・ブレス。

知っているだろうか。

知らない人は、検索してみると良い。…ヤバいものだ。

人間の食べるものではない。

ましてや、子供も手に取るビスッコに、つけていい味ではないだろ。

何考えてんの?

うっかり死人が出るわ。

「私がどらごんずぶれすを買おうとしたら、慌てて『ジュリス隊長は、メープル味が好きだって言ってましたよ!』って…」

「そうか…」

勿論、俺はビスッコのメープル味が好きだなんて、一言も公言した覚えはない。

しかし、ベリクリーデの部下もきっと、必死だったんだろうな。

ベリクリーデにドラゴンズ・ブレスを買わせない為に。

何としても、ベリクリーデが納得する口実をでっち上げる必要があった。

…のは、分かるのだが。

「ジュリスはビスッコメープル味が好き過ぎて、丸一日食べなかったら、深夜に『ビスッコをくれ〜…』って徘徊するんだって」

「…」

「ジュリス、そんなにビスッコ好きだったんだね」

…なぁ。

…俺、何処のビスッコ中毒?
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