神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
そんな、騒動がありながら。

俺とルイーシュが、旧アーリヤット皇国領の、キルディリア総督府に辿り着いた時には。

時刻は、既に日付が変わる頃になっていた。

いつもなら、とっくに夢の中の時間だが。

さっき、あまりに衝撃的なものを見たせいか。

頭が冴えてしまって、とてもじゃないが、眠気なんて微塵も感じなかった。

…それに。



「ようこそ、お待ちしておりました。キュレムさん、ルイーシュさん」

「…どーも…」

キルディリアの総督、とかいう。

イシュメル女王に、アーリヤット領の統治を任された、キルディリア魔王国軍の女性上級魔導師は。

深夜にも関わらず、俺達の到着を待っていてくれたようだ。

「お二人共、長旅でお疲れでしょう。積もる話もありますが、まずはゆっくりと旅の疲れを…、」

「いや、そんなことはどうでも良いんだけど」

休む気分になんてなれないんだよ。

ルイーシュには悪いけどな。

「一刻も早く、優先して進めるべきことがあるだろ?」

「…?…は、はい…そうですね」

そうだよ。

「すみません。旧アーリヤット皇国民の魔導師証明書の発行、そして非魔導師収容施設の整備と増設…」

「は?」

「それから何よりも、旧アーリヤット皇国民の抵抗運動の鎮圧。…どれも、並行して進めてはいるのですが、何分本国とはあまりに勝手が違っていて、なかなか…」

「ちょっと待て。誰がそんな話をしたよ?」

魔導師証明書の発行?

収容施設の整備?

反乱の鎮圧…はまぁ必要だけど。

それ以外のことは、全部後回しで良いだろ。

それよりも、何より大切なのは。

「旧アーリヤット皇国民の生活を保証することだろ…!そうすれば、おのずと抵抗運動も収まるはずだ」

まずは、滞っているという物流を再開させ、国内にモノが行き渡るようにする。

最低限でも、物資の供給が安定し、生活が保証されれば、国民達の感情も多少なりとも収まるだろう。

「生活の保証…?いえ、それは大丈夫ですよ。魔導師登録を済ませれば、元アーリヤット皇国民であっても、キルディリア本国の魔導師も、ほぼ同等の扱いを受けられます。一般魔導師と同じように…」

「魔導師の話だけじゃないんだよ…!いっ、ぱん、こく、みん!全員!」

俺はスタッカートをつけながら、強調した。

「非魔導師も含めた、元アーリヤット国民全員のこと!」

「え…。非魔導師も、ですか?」

当たり前だろ。何言ってんの奥さん。

そんな、青天の霹靂です、みたいな顔しないでくれる?

俺、そんな意外性に満ちたこと言ってないだろ。

「証明書の発行云々なんて、まとめて後回しで良いんだよ。その前に、ちゃんと国民に必要なものを必要なだけ供給して、生活を守ってやらなきゃ…。それが占領国の義務ってもんだろ?」

「は、はぁ…」

アーリヤット総督の女性は、首を傾げながら頷いた。

…納得してない、って顔だな。

なんでこんな、当たり前のことさえ分かってないような奴を、総督に任命したんだ?

絶対おかしいだろ。
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