神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
別に気にする必要、ないのかもしれないけどさ。

俺達は魔導師なんだから、それも、金ピカの上級魔導師。

貴様ら控えおろう!と、堂々と入店すれば良い。

だけどさ、そうじゃねぇの。

俺達は別に、誰かにちやほやして欲しいんじゃないんだよ。

ただ、他の人と一緒に、同じように、気兼ねなくピザを食べたいだけ。

…それだけなのに。

「くそっ…。こんなことやってたら、一生昼飯、決まんねぇな…」

「そうですね」

妥協しなきゃいけないんだろうな。

だけどさ、せめて、もっと、こう…。

…魔導師も非魔導師も関係ない、寛容な店に入りたい。

形式張った、高級レストランでもない。

SNSで話題にされるような、お洒落なカフェでもない。

その辺にある、気軽に誰でも入れる、大衆向けの食堂みたいなところに入りたい。

分かるだろうか、この気持ち。

「もっとこう…ないのか?給食のおばちゃんが経営してるような、昔懐かしい食堂みたいな…」

「メニューが手書きで書いてあるようなお店ですよね?」

「そう、それそれ」

そういうのを求めてるんだよ、俺は。

すると、ルイーシュが。

「あんなお店ですか?」

「おっ…」

さびれた通りの角に、ぽつんと立っている小さな食堂を指差した。

あれだよ。まさに、俺が求めていたような店。

店の前に立つと、そこには。

他のお店と同じように、「魔導師のみ利用可」という貼り紙が貼ってあった。

しかし、さっきのハンバーグ屋や、ピザ屋みたいに。

それ見よがしに、でかでかとした貼り紙ではなかった。

B5サイズくらいの小さな白い紙に、控えめにボールペンで書いてある。

本当はこんなこと書きたくないけれど、命じられたから仕方なく書いてます、という。

遠慮がちで申し訳なさそうな気持ちが、この貼り紙だけで充分伝わってくる。

良かった。

この国にも、まだ人情ってものが残ってたんだな。

「よしっ…ここにしようぜ」

「良いですよ」

ルイーシュの了承も得られたので、

俺は、古ぼけた木製の扉を開けた。

すると。

「いらっしゃいま…。…あっ…!」

「…?」

店内には、着古したエプロン姿の、初老のおばさんと。

常連客らしき、数人のお客さんがテーブルに座っていた。

お客さん達は、お喋りをしながら、定食らしきランチを食べているところだった。

おっ…あれは生姜焼き定食だな。うまそ。

あっちのお客さんが食べてるのは、唐揚げ定食っぽいな。うまそ。

その隣のお客さんは…あれはミックスフライ定食だな。…めっちゃうまそ。

これこれ。こういう定食屋を求めてたんだよ。俺は。

…しかし。

笑顔で迎えてくれた店主のおばちゃんは、俺とルイーシュを見て、顔を強張らせた。

…いや、正しくは。

俺とルイーシュが、首からさげている魔導師証明書を見て、硬直したのだ。
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