神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
以前、クロティルダを探しにベリクリーデと一緒にこの国に来た時。

ベリクリーデは、「何となくこっちのような気がする」みたいな曖昧な勘で。

その勘についていくと、見事、クロティルダを発見した訳だが。

今回は、そのベリクリーデが行方不明なのだから。

俺は、自分の力だけでベリクリーデを見つけなければならない。

生憎と…俺は、ベリクリーデみたいな勘の冴えはないからな。

意気込んで、遥々キルディリア魔王国まで来たものの…。

「…」

途方に暮れるのは後回しだ。

俺にはベリクリーデみたいな勘はないが、これでも俺は、そこそこの人生経験があるからな。

迷路の入口で二の足を踏むより、まずは手探りでも良いから、前に進むことが大切だと知っている。

だから、まずは前に進むことにする。

目指すは、キルディリア魔王国の王都、ファニレスだ。

多分ベリクリーデは、イシュメル女王の命令によって拉致されたのだ。

つまり、イシュメル女王はベリクリーデに用がある。

ならば、ベリクリーデは王都に…恐らく、ファニレス王宮にいる…。

と、予測するのが一番…妥当な気がする。

他に当てもないことだし、やはり、まずは王都を探しに行くのが無難だろう。

…よし。

「…今行くからな、ベリクリーデ」

待ってろよ。

イシュメル女王が何を企んでるのか知らないが。

多分、ろくでもないことを企んでるに違いないが。

それでも、その目論見の為に、ベリクリーデを利用させることだけはしない。

…さて、王都に向かうとなればまずは、以前と同じように駅に、

「…やはり来ていたか。ジュリス・レティーナ」

「あ?」

背後から突然、聞き覚えのある声がして、振り向くと。

そこには、険しい顔をした天使…クロティルダがいた。

…お前。

「単身、キルディリア魔王国に乗り込むとは…。なかなか剛毅なことを考える」

なんだ。馬鹿にしてんのか?

「…元はと言えば俺の不注意で、ベリクリーデが連れ去られたんだぞ?…黙ってられるか」

「だが、我が姫は自分が連れ去られたことを、お前のせいだとは思っていない」

あぁ、そうかい。

「ベリクリーデがどう思っていようと関係ない。俺がそう思ってるんだからな」

だから、これは俺の意志だ。

俺は自分がそうしたいから、ベリクリーデを連れ戻しに来た。

それだけだ。

「そうか…。…利口なように見えて、意外とそうでもないんだな」

「…何だよ。喧嘩売ってんのか?」

お前の羽根、むしってやろうか。

今は目立つ訳にはいかないから、我慢してやるけどな。

「いや、むしろ尊敬の念を抱いている」

「皮肉が上手くなったもんだな」

「本気で言ってるんだ。…自分がそうしたいと思ったことを、ひたむきに貫き通す。…俺には出来なかった生き方だ」

「…」

…別に、今からでも遅くないだろ。

自分がそうしたいと思ったこと、やれば良いだろ。

誰も止めたりしねーよ。

「…クロティルダ。お前、ベリクリーデの傍にいたんだろ?」

「あぁ」

「じゃあ、ベリクリーデが今何処にいるか、知ってるんじゃないのか」

俺の前に、不用意に姿を現したからには。

存分に、利用出来るだけ利用させてもらうぞ。
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