神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
「…やっぱり、ここにいたんだね」

令月はいつの間にか、両手に小太刀を構えていた。

実に隙のない構えだ。

「あなた達こそ。…何をしに来たんですか?」

「決まってるでしょ?…『八岐の大蛇』とかいう新興組織にお株を奪われて、金で雇われて他国の戦争に首を突っ込んでる、情けない古巣の暗殺者達を笑いに来たんだよ」

「…」

『玉響』は無言である。

どうやら、図星だったらしい。

「あとは、まー…。ここに来れば、君との因縁に決着をつけられると思ってね」

すぐりもまた、いつの間にか、戦闘態勢だった。

両手に糸を絡ませ、いつでも射出出来るよう備えていた。

…やっぱり、そうだったんだ。

令月とすぐり…この二人にとって、ナツキ皇王の奪還作戦なんて、本当はどうでも良くて。

『アメノミコト』の暗殺者…『玉響』が、ファニレス王宮にいるという情報を、キュレムとルイーシュに聞いた時から。

この二人はずっと、『玉響』と決着を受けることを考えていた。

…そうだね。

ナツキ皇王には悪いけど、君達にとっては、そっちの方が遥かに重要だ。

「…マシュリ、先に行って」

小太刀を構えた令月が、僕に言った。

手助けは要らない。先に行け、と。

一応、ナツキ皇王を奪還するという目的を、忘れた訳ではないらしい。

プロ意識だね。

…ならば。

僕もまた、自分の役目を果たすとしよう。

「…分かった」

僕は、猫の姿から、マシュリの姿に『変化』し直した。

ここからはもう、身分を隠す必要はない。

堂々と、侵入者として振る舞わせてもらおう。

「でも、無事に戻ってきて」

「うん」

「だいじょーぶだよ。こっちを片付けたら、すぐ追いつくから」

言ったね?

今の言葉、忘れないからね。

「…逃がすと思いますか?」

『玉響』が僕を睨み、糸魔法を射出。

恐らく、僕を拘束しようとしたのだろうが…。

僕が、身を躱す必要さえなかった。

素早く動いた令月が、僕に届く前に、『玉響』の糸を両断していたからだ。

…さすが。

「早く。行って」

「…気をつけて」

「うん、分かってる」

君達がそう言うなら、信じるよ。

『玉響』の前に立ち塞がる、令月とすぐりを置き去りに。

僕は、ナツキ皇王奪還の為に、王宮の地下を目指して走り出した。
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