神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
アーリヤット人が反乱を起こしたと言うから、何事かと思って駆けつけてみたら。

「ナツキ様を返せ!」

「俺達の国を返せ!」

「キルディリア人は、この国から出ていけ!!」

ビルの中に立てこもったアーリヤット人は、外にいるキルディリア軍に向かって。

ぽかぽかと、石やガラスの破片や、その辺で拾ったガラクタみたいなものを投げつけていた。

一方のキルディリア軍は、分厚い鉄の盾を構えて、その投石攻撃を防ぎつつ。

「下らないことはやめて、さっさと出てこい!」

「この建物は包囲されてるんだぞ!」

「こんなことしても無駄だ!」

などと、立てこもりアーリヤット人に向けて、拡声器で怒鳴りつけていた。

…うん。

なんつーか…。…小学生の陣地取り合戦みたいなことしてんな。

「何だか賑やかで、楽しそうだね」

これには、ベリクリーデも好奇心いっぱいの表情でそう言った。

気持ちは分かるけども。楽しくはねーよ。

まぁ、なんだ。

この調子じゃ、今のところ、死者は出てなさそうだな。

よし、これなら…。

両者の間に入って、平和的に仲裁することも可能なはず、と思い。

「お前ら…いい加減、不毛なことはやめ、」

割って入ろうとした、その時。

「お前達!いつまで手こずってるつもりだ」

「…!エリトール様!」

ん?

盾を構えるキルディリア国軍に、一人の魔導師が到着した。

銀色の魔導師証明書をぶら下げた、キルディリア魔王国軍の魔導師のようだ。

エリトール…?

何処かで聞いたような…。

「エリトール様、どうしてこちらに…?向こうの状況は?」

「とっくに制圧してきた。脆弱なアーリヤット人なんて、どうってことはない」

…制圧?

…まさか。

「で、こっちはどうなってる?」

「は…。手強い奴らです。何度呼びかけても、まったく応じる様子がなく…」

「何を馬鹿なことを…。そんな悠長なことをしてるからだ」

そう言うなり。

エリトールと呼ばれた男は、アーリヤット人が立てこもっているビルに向かって杖を向け。

あろうことか、大きな瓦礫の破片を、ビルの窓ガラスに叩きつけた。

ガシャン!!と大きな音がして、窓ガラスが粉砕。

建物の中にいた人々が、悲鳴をあげる声が響き渡った。

…なんてことを。

「え、エリトール様…!?」

「立てこもっていたいなら、そうすれば良い。キルディリア魔導師の命令を聞かないアーリヤット人など、生きている価値もない。…建物ごと押し潰してやる」

その目には、憎しみさえこもっていた。

「で、ですが…!中には、魔導師の方も…!」

おい。何だその言い方は。

魔導師じゃなかったら、容赦なく殺しても良いとでも言うつもりか?

命の価値は、魔導師か否かに関わらず、誰しも等価であるはずだ。

しかし。

「魔導師と言っても、どうせアーリヤット人の脆弱な魔導師だろう?」

「そ、それは…」

「しかも、こうしてキルディリアの支配体制に抗っている。『青カード』などに味方する馬鹿な魔導師は、生かしておく必要はない」

「…」

なんという、横暴な理論だろう。

自分達に従わない人間は、魔導師だろうと非魔導師だろうと関係なく、命を奪っても構わないと。

しかも…。

「やれ。情けをかけるな」

「…分かりました」

エリトールの指示によって。

最初は投降を呼びかけようとしていた彼の部下達も、覚悟を決めた。
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