神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
まー、でも、少し前までの俺だったらさ。

『八千代』がどんなピンチに陥っても、助けようなんて思わなかっただろーね。

むしろ、自業自得、と思ってたと思う。

それは俺だけじゃなくて、『八千代』も同じなんじゃないかな。

暗殺者同士でも、仲間意識なんて欠片もない。

手助けなんてしない。ピンチだからって、命を救ったりしない。

どうなっても自己責任、死んでも顧みたりしない。

…それが、『アメノミコト』の暗殺者の流儀だった。

だけど、今の俺達は、『アメノミコト』じゃないから。

ただの…イーニシュフェルト魔導学院の生徒だから。

あの頃とは違うんだよ。…お互いにね。

あと、それから、憎み合ってた、ってのは間違いだから。

勝手に、一方的に『八千代』を憎んでたのは俺だけで。

『八千代』は別に、俺を憎んでなんかいなかった。

つまり、まぁ、認めたくないけど。

俺が一人、幼稚だったってことだね。

そのせいで…『玉響』も、俺が殺してしまった。

それは俺が、一生背負っていかなきゃならない十字架だと思ってるよ。

「…。…不愉快です」

『玉響』は眉間に皺を寄せ、低い声で言った。

あ、そう。

君がどう思おうと、俺の知ったことではないけど。

「あなた達では、僕には勝てません。少し考えれば分かるはずです」

さー、そうなのかな?

少なくとも、俺は負けるつもり、ないけど。

「この場合、任務を達成する為には、片方を犠牲にしてでも、特攻を仕掛けるべきです」

「『アメノミコト』では、そういう教えだったね」

命よりも、任務を達成することを優先する。

それが、『アメノミコト』でのルールだった。

「それなのに…あなた達は、どちらかを犠牲にするつもりはまったくない」

「よく分かったね。…その通りだよ」

どちらかを…『八千代』を犠牲にして、任務を果たす?

…ばっ…かじゃないの?

それなら、俺が犠牲になって『八千代』一人を生きて返すことを考えるよ。

『八千代』の方が、俺よりずっと…生きる権利があるんだからさ。それが当然だよ。

だけど、『八千代』は馬鹿だから。

どーせ『八千代』は、俺と同じことを考えてるんだよ。

自分が犠牲になってでも、俺を生きて帰らせようってさ。

じゃあ、もうどーしようもないじゃん?

何とか、二人で生還する方法を考えなきゃ。

「…そうですか。それなら」

『玉響』の憎悪が、一層深まったと同時に。

彼が放つ殺気も、より一層膨れ上がった。

「望み通り…二人まとめて、あの世に送ってあげます」

…だってさ。怖いねー。

じゃあ精々、二人まとめてあの世に送られないように…頑張るとしようかな。
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