神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

side羽久

ーーーーー…イシュメル女王との交渉が、決裂しかけたその時。




全ての争いを終わらせる為の、キーパーソンが。

キルディリア総督府の屋根を突き破り、壁をぶち壊して。

超絶ダイナミック入室してきた。

神竜バハムート形態に『変化』した、マシュリである。

「マシュリ…!無事だったのか、」

「むふ(うん)」

…口に、なんか咥えてね?

すると、そのマシュリの背中から。

ひょこっ、と顔を覗かせたのは、

「やぁ。連れてきたよ」

「恥ずかしながら、戻ってきた」

「すぐり…!それに、令月も…!」

良かった。お前達も無事だったんだな。

二人共、酷い怪我を負っているということもなさそうだ。

あと、恥ずかしくないからな、令月。堂々と帰ってこい。

「マシュリ…。令月、すぐり。ナツキ様は…」

「ふじらよ(無事だよ)。…はい」

マシュリが、口に咥えていた人物を、ぺっ、と床に吐いた。

唾じゃないんだから。

「く…。うぅ…」

その人物は、俺達が…いや。

全てのアーリヤット皇国民が、待ち望んでいた人物だった。

「…ナツキ様…」

シルナが、その名前を呼んだ。

神竜マシュリの唾液にまみれながら、キルディリア魔王国から遥々、マシュリタクシーに乗ってきたナツキ様は、

長きに渡ったキルディリアでの監禁生活も相まって、さすがに、疲れた様子だった。

…マシュリタクシーは非常に便利だし、有り難いのだが。

乗り心地が…ちょっとアレなのが、たまに瑕だよな。

乗せてもらってるんだから、文句は言っちゃいかんな。

後でちゅちゅ〜るやるから。許してくれ。

「貴様ら…!」

マシュリ達が連れてきた、ナツキ様の姿を見て。

さすがのイシュメル女王も、目を見開いた。

…予想外だったか?

まさか、俺達が平和交渉に臨んでいる間。

別働隊が、こっそりキルディリア魔王国に潜入して、ナツキ様を取り戻しているとは思わなかったか。

「下らぬ知恵を回しおったな、イーニシュフェルトの聖賢者…!」

「…ごめんね。でも、今回は私の作戦じゃないよ」

その「褒め言葉」は、今回の作戦指揮官に。

ナジュに、ちゃんと伝えておいてやるよ。

イシュメル女王に歯噛みさせたと聞けば、ナジュも喜ぶだろうよ。

…だが。

「これまで何度も、騙し討ちを仕掛けてきたのは、そっちも同じだろ」

卑怯な真似を、なんて言わせないぞ。

これまで散々、卑怯な真似をしたのは、そっちじゃないか。

だから…今回は、やり返させてもらったというだけだ。
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