神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…場所は、キルディリア魔王国。

入国検問所の近くにあるホテルに、無闇さんと共にチェックインした。




「ふぅ…。…とりあえず、無事に辿り着きましたね」

「そうだな」

ようやく目的地に辿り着いた安堵感からか。

旅の疲れがどっと出てきて、私はベッドに腰掛けた。

…意気込んで、出国してきたのは良かったが。

ジュリスさんに聞いていた以上に…。…この国に来るのは、大変だった。

まず…。

「…何だか…まだ、足元がふらつくような気がしますね…」

「俺もだ。…随分揺れたからな」

「ですよね…」

船旅は、これまでも何度か経験したことがあるけれど。

こんなに過酷な船旅は、今回が初めてです。

過酷なんて、いくら何でも言い過ぎ、と思うでしょう?

全然、言い過ぎじゃないんです。

キルディリア魔王国への船旅は、荒れ狂う大海を越えるようなもの。

ルーデュニア聖王国の港を出港した当初は、波も穏やかで、とても快適な船旅だったのに。

キルディリア魔王国が近づくと共に、段々と海は荒れてきて。

まるでエレベーターに乗っているかのように、上に下に、ふわふわ、ふわふわと…。

…うぅ。思い出しただけで気持ち悪くなってきた。

食欲などあろうはずもなく、ひたすら船酔いと戦ってました。

あまりに激しく揺れるものだから、「この船、本当に大丈夫だろうか?」という不安にも駆られ。

小心者の私は、心の中で、どうか無事に着きますように、と必死に祈っていたのだが。

そんな心配をしているのは、私くらいのもので。

他の船客達は、全く不安がる様子はなく。

いつものことと言わんばかりに、けろりと談笑したり、飲食したりしていた。

むしろ、これが普通なんですよね。

ジュリスさん曰く、キルディリア魔王国近郊の海は、いつもこんな感じで。

揺れるのが当たり前、荒れてるのが当たり前なんだそうです。

…キルディリア魔王国は、元々流刑の血地。

故郷で異端者とされた魔導師が、島流しの憂き目に遭って、この荒れた小島に追放され。

そうして出来た魔導師の国が、ここ、キルディリア魔王国なのだ。

こんな荒れた土地に追放された、キルディリア魔王国の先祖達が気の毒だった。

…時代が時代なら、アルデン人である私も、同じ目に遭っていたのかもしれませんね。

そう想像すると、心がきゅっと痛くなった。

すると。

「それよりも俺は、入国審査の方が衝撃的だったな」

と、無闇さんが言った。

…入国審査…。そうですね。

キルディリア魔王国の入国検問所は、確かに、独特なものでした。

事前に、ジュリスさんから話を聞いていなかったら。

今頃、もっと動揺していたでしょうね。
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