神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…シュニィと無闇の説明によると。

二人は、何事もなくキルディリア魔王国に潜入した。

俺達がそうだったように、二人も入国審査で魔法を使わされ、オレンジ色のカードを発行されたとか。

未だ健在のようだな。キルディリアの、証明書制度…。

シュニィは、はっきりとは言わなかったが。

家畜札みたいに証明書を首からさげさせられて、二人共、さぞかし不快な思いをしたことだろう。

分かるよ。俺も超嫌だったから。

無事に王都ファニレスに辿り着いた二人は、真っ直ぐに王宮に向かい。

そこで、イシュメル女王に謁見したという。

そこまでは順調に進んだんだな。…何よりだ。

だが、二人が順調だったのはそこまでで。

イシュメル女王に謁見し、シュニィはシルナに頼まれた通り。

アーリヤット皇国との戦争をやめるよう、かの国から手を引くように懇願したという。

シュニィが必死に平和を訴える…その姿が目に浮かぶ。

…だがイシュメル女王は、そんなシュニィの訴えには耳を貸さなかったそうだ。

むしろ、そんなことはどうでも良いとばかりに、シュニィと無闇に、キルディリア魔王国に寝返るよう促し。

それを断られると、もうこれ以上話は聞かない、と追い出されたとか。

それどころか…。

「隠し玉…。…イシュメル女王がそんなことを?」

「はい…」

「…」

アーリヤット皇国の抵抗を受け、戦争が泥沼化する懸念を、シュニィが口にしたところ。

イシュメル女王は、「隠し玉がある」と自慢げに答えたそうだ。

「何なんだろうね?…隠し玉って…」

「…さぁ…。そこまでは…」

「だよね…」

隠し玉なんだから、然るべき時まで隠さなければ意味がない。

多分、ろくでもないこと考えてるんだろうなぁ。

あの女王のことだから。

「結局…。有益な情報は何も聞き出せず、戦争を止めることも出来ず…」

「シュニィちゃん…」

「…すみませんでした」

再度、頭を下げて謝るシュニィ。

「大丈夫だよ、シュニィちゃん。…顔を上げて」

シルナが、そんなシュニィを宥めた。

「正直なところ…多分私達が何を言っても、イシュメル女王は、戦争をやめる気はないんじゃないかって…そう思ってたんだ」

…うん。

…実は、俺もそうだ。

強引で、傲慢な女王様だからな。

他国の人間の忠告や進言に、素直に耳を貸すとは思えない。

「それでももしかしたら、と思って一縷の望みに託したけど…。…やっぱり、そう上手くは行かなかったみたいだね」

「…はい…」

「分かったよ。ありがとう、シュニィちゃん。無闇君。後のことは心配しないで」

シルナは、目的を果たせなかった二人を責めることはなく。

むしろ、優しい微笑みを浮かべてそう言った。

「二人共疲れたでしょう?しばらくはゆっくり休んで…。あ、そうだ。美味しいチョコテリーヌがあるんだよ。一緒に食べ、」

「シルナの言うことは気にするな。二人共帰って良いぞ。シュニィ、子供達のことが心配だろう?」

「はい…。すみません。では失礼させていただきますね」

愛する家族を、自宅に残しているシュニィ。

シルナへの報告なんて、さっさと済ませて、さっさと帰りたいに決まってる。

無闇もきっと疲れてるだろうし、早いところ帰って休ませてやりたかった。

「私のチョコテリーヌはっ!?」

「それは一人で食べてろ」

それどころではないだろ。馬鹿シルナ。
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