神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
結局、クロティルダを連れ去ったのは…クロティルダの姉のケルディーサ、とかいう天使だったか。

今頃あの天使、何処で何してるのか知らないが…。

今回の一件で懲りて、二度と手出ししてこない…のなら良いが。

もし、まだ諦めていなかったら…。

「既にご存知だとは思いますが…。三大天使も、一枚岩ではありません」

と、ケルビムが説明した。

そうだろうな。

だからこそ、天使同士で対立するとかいう、こんな面倒なことになってるんだ。

巻き込まれる人間にとっては、迷惑以外の何物でもない。

「私以外の三大天使…。セラフィムとソロネは、我らが主…聖神ルデスの復活を望んでいます。ひいては、我らが主に反旗を翻えした、イーニシュフェルトの聖賢者を…」

聞いた名前だな。

「シルナ・エインリーのことか」

「はい。神に逆らった彼を抹殺し、そして彼の傍にいる、邪神イングレアの器を葬ること…」

邪神イングレアの器…。これは、羽久・グラスフィアのことだな。

いや…正しくは、羽久の中にいる、最初の人格。

二十音・グラスフィアのことだ…。

「そして、我らが主を復活させる為には、聖神ルデスの写し身である、そちらのベリクリーデさんも必要不可欠です」

「…ふぇ?」

智天使ケルビムは、ベリクリーデの方をじっと見つめた。

当のベリクリーデは、きょとんとしていたが。

…本人には、まったくその自覚はないらしいな。

この間抜けさに呆れるが。

…でも、それくらいで丁度良いんだ。

器だの写し身だの、そんなのベリクリーデの意志じゃない。

お偉い天使様方が、勝手に決めたことなのだから。

「セラフィムとソロネは、そう簡単には諦めないでしょう。再び策を弄して、ベリクリーデさんや、シルナ・エインリー学院長のことも狙うやもしれません」

「そう言うあんたは、随分他人事なんだな」

「私は、聖賢者シルナ・エインリーを抹殺する必要はないと思っています。それに、ベリクリーデさんのことも…」

へぇ。分かってるじゃないか。

話の分かる天使だ。

更に、クロティルダも。

「…お前に手出しはさせない」

ベリクリーデの方を見つめ、毅然とそう呟いた。

…大した決意だな。

あんた、自分が天使だってこと忘れてないか?

セラフィムとソロネ…そいつらも三大天使なんだろう?

ケルビムと同じく、クロティルダにとっては上司なのに。

その上司に反旗を翻して良いのか。

そして、ケルビムにしても同じこと。

「お前ら、三大天使の意志に反対して良いのか?」

つまり今、三大天使の中で、意見が真っ二つに割れてるってことだろ?

シルナ・エインリーをぶっ殺そう派の、セラフィム・ソロネ派と。

シルナ・エインリーを守ろう派の、ケルビム派。

そして、それぞれの三大天使には、その下に付き従っている七大天使がいる。

ケルビム派には、リューイとクロティルダが。

他のセラフィムとソロネの下にも、ケルディーサや、アーリヤット皇国で暗躍していた、ハクロとコクロもいる…。

天使も一枚岩じゃないって言うのは、あれは本当らしいな。

「天使も色々大変だな。人間の方が楽じゃね?」

「そうみたいですね」

これには、キュレムとルイーシュも呆れ顔。

…まったくだよ。

争い事なんて、人間同士だけでも大変なのに。天使まで争うなんてやめてくれよ。
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