神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
これって…えっと…。

オッケー、ってことなのか?

「…良いんすか?」

いや、ハナから亡命するつもりで来たんだから。

「駄目に決まってるだろ、帰れ!」と言われたら、それはそれで困るんだが。

あまりにもあっさりと迎えられたもんだから、逆に怪しいって言うか…。

…そんな軽いノリでOKしちゃって、良いの?

つーか、あんたさんが独断で決めて良いことなのか?亡命って…。

しかし、入国審査官は。

「勿論です。我が国はいつでも、優秀な魔導師様の移民を歓迎していますから」

「は、はぁ…」

「きっとあなたも、生まれた国で差別され、迫害に耐え兼ねて、逃げてこられたんでしょう?」

は?

「大丈夫です。我が国には、そういった不遇な扱いをされた魔導師の方々が、たくさんいます。きっとあなた方も、魔導師というだけで、これまで辛い思いをされたんですよね?」

心から憐れに思っているような、同情的な口調で。

「いやー…。別に…」

俺が生まれたルーデュニア聖王国は、キルディリア魔王国ほど極端ではないけれど。

シルナ学院長のもと、それなりに魔導師に寛容な国だぞ?

しかし、ルイーシュは俺の言葉を遮るように、すかさずこう言った。

「えぇ、その通りです。祖国での魔導師に対する扱いは、とても酷いものでした」

は?

ルイーシュ、お前何言ってんの?

「そうなんですね、やっぱり…」

「はい…。それはもう、酷かったんですから。魔導師というだけで、薄給で朝から晩まで酷使されて…」

聖魔騎士団で、一番のサボり癖のある男がなんか言ってるぞ。

俺は、ぽかーんと間抜けに口を開けて、ルイーシュの演技がかった台詞を聞いていた。

「過酷な仕事を、何度も強制されました。…刺されたことだってあるんですから」

「…!なんて酷いことを…!」

…うん。確かに、刺されたことあるな。

…スズメバチに、だけど。

「一緒に働いている同僚だって…。酷い人ばかりだったんですよ」

「そうなんですか…?」

「えぇ。上司はと言えば、会う度に、口を開けば自慢話ばかりで…」

…それはアトラスのことかな。

確かに、あいつには自慢話ばかり聞かされるな…。

…主に、嫁と子供の自慢話をな。

「それから…仕事中だろうと関係なく、常に女性を傍に侍らせている同僚とか…」

「えぇっ…」

…それは無闇のことかな。

確かに、あいつは常に女性を侍らせてるな。

…契約してる魔導書の化身、月読ちゃんだけどな。

「それと…職場の敷地内に、勝手にバナナを植えるという奇行をする同僚もいて…」

「まぁ…そんな…」

…それはベリクリーデちゃんのことだな。

確かに奇行だけど、ベリクリーデちゃんの場合は御愛嬌って言うか。

…そもそも、元凶は天使だから。ベリクリーデちゃんは無罪だろ。

「他にもいますよ。四六時中、甘いものを食べることしか頭にない教師とか…」

「…うわぁ…」

…ドン引きされてるが。

それは間違いなく…学院長のことだな。

あの人は…まぁ…。

…ちょっと、否定のしようがないな。

「挙げ句の果てに、『面倒臭いから』という理由で仕事をサボろうとする同僚もいて」

「それは…酷いですね」

まったくだ。

…。

「それはお前のことだろ!」とツッコまなかった俺、超偉い。
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