神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
車両に乗り込むなり…。

「魔導師様。これを首からさげてもらえますか?」

と言って、さっきの男性に、一人ずつネームホルダーを渡された。

…これは。

「えぇっと…これって…」

「魔導師証明書です」

出た。

キルディリア魔王国の代名詞。

「…確か、この国に入国した者は全員、これをつけてないといけないんだったな…」

「よくご存知ですね、魔導師様。その通りです」

この安っぽい、つまんない紙っぺらの証明書のせいで。

散々嫌な思いをさせられた、ってジュリスが愚痴ってたからな。

そういえば、さっき検問所で俺達の相手をした入国審査官の女性も、首からネームホルダーをさげていた。

ネームホルダーの中には、銀色のカードが挟まっていた。

そして、今、王宮からの使いだというこの男性も、同じく銀色の証明書を。

俺達がたった今手渡されたネームホルダーにも、それぞれ、銀色の証明書が入っていた。

…。

「…この銀色のカードは…」

「キルディリア魔王国において、一般魔導師であることを証明するカードです」

一般魔導師…。

確か、青いカードが非魔導師、オレンジ色のカードが海外からの旅行客の魔導師、だったよな?

「ってことは、俺達も一般魔導師…?」

出来れば上級魔導師の…ゴールドカラーの証明書が欲しかったんだが?

「申し訳ございません。お二人は上級魔導師相当の魔導師様だと伺っているのですが…。上級魔導師の認定は、イシュメル女王陛下でなくては行えないのです」

「あ、そうなんだ…?」

「はい。ですから、まずは王宮に来ていただいて、イシュメル女王陛下から直々に、上級魔導師の認定を受けていただくことになります。それまでは、そちらのシルバーカードの証明書をお使いください」

成程ね。

上級魔導師の認定が出来るのは、イシュメル女王だけ。

だからイシュメル女王に会えるまでは、銀色のカードで我慢してくれ、と。

まぁ、別に良いけどさ。

後々、ゴールドカードが約束されてるんなら。

「分かりました。じゃあ、これをつけておきます」

「本当に申し訳ございません。お二人共、上級魔導師相当の魔導師様でいらっしゃるのに…。一般魔導師の証明書しか発行出来ず…」

「いや、別に…。そんなことは気にしてないけど…」

良いじゃん。銀色の証明書。

銀色って、なんか格好良くね?

俺、生まれてこの方、銀色なんて身につけたことねーよ。

銀どころか、銅もない。

俺がもらえるのは、精々参加賞くらいが関の山だからな。

…それに、ベリクリーデちゃんが身に着けさせられた、忌まわしき青い証明書に比べれば。

何色でも天国ってもんよ。

「女王陛下より上級魔導師の認定を受けた際には、すぐにゴールドカードを発行致しますので…」

「はぁ…どうも…」

別に屈辱でも何でもないぞ。

俺とルイーシュは、それぞれ、銀色の証明書が入ったネームホルダーを、首からさげた。

…どう?様になってるか?

キルディリア魔王国民っぽく見える?

「それから、この国に滞在している間は、外に出る時は必ず、出来れば家の中でも、証明書の携帯を忘れないよう、お願い致します」

「あぁ…うん、はい」

「もし証明書の携帯を忘れた場合、『青カード』…非魔導師と同じ扱いを受けることがありますので、ご注意ください」

「…」

…俺は別に良いけどね。

非魔導師と同じ扱いでも。まったく構わんよ。

「それでは、王都ファニレスへ…そしてファニレス王宮までお連れいたしますね」

「…はいよ」

愛想の良い若い男性は、にこりと微笑み。

俺達は、王都ファニレスに向かって出発した。
< 83 / 328 >

この作品をシェア

pagetop