イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした
部屋のドアが開いた瞬間、
美香奈は、思わず立ち止まった。

玄関に漂う、わずかに新しい空気のにおい。
差し込む西日の光が、フローリングの床に静かに広がっている。

靴を脱いで、一歩ずつ中へ。

「……きれい……」

思わず漏れたその声は、誰にも届かないような小ささだったが、
確かに感情を伴っていた。

リビングには、小ぶりながらも落ち着いた色合いのソファとローテーブル。
その横には、未開封のまま置かれた家電の取扱説明書が丁寧にまとめられていた。

キッチンには電気ポットや電子レンジ、必要最低限の食器とカトラリー。
バスルームにも新品のタオルと洗面具が揃っていた。

「本当に……生活できるようにしてくれたんですね」

美香奈は、そうつぶやきながら振り返り、神谷を見上げる。

「……ありがとうございます。
真木先生にも……“ありがとう”って、伝えてもらえますか」

神谷は目を細めて頷いた。

「ええ。きっと、喜ばれます」

新しい空間。
まだ“住む”という実感はなかったが、
ここには確かに“戻る場所”としての気配があった。
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