紅い蝶の見る夢
海ちゃんが“B2”に入るきっかけを作ったのはサクちゃんだ。
サクちゃんが海ちゃんを見つけてくれたから僕達は出会うことが出来た。
それを後から入って来た尚哉に我が物顔で海ちゃんのことを語られたら面白くないに決まってる。
斯く言う僕もサクちゃん同様面白くないし、今ここにあーちゃんさえいなければ何発かぶん殴っていただろう。
「てか、何で駿河が海のこと知ってんだよ?」
ヒーくんの言葉に僕以外の皆の視線が集中する。
「まさかアンタ、姫信者のくせにとうとう海のことまで…」
「へ?」
「お前って案外目移りし易いんだな」
「えっ、え…?」
「おや、駿河は天羽一筋だと思っていたんだが」
「は、はいいいいっ!?」
「すーちゃんのくせに生意気だぞ♡」
「ヒェ〜!桃くんの笑顔が怖いよぉぉおおお!!」
失礼な。
「え、何、マジで姫から海に乗り換えたのかよ。勇者だなお前」
「………」
「えっ、ちょ、待って下さい!ち、違いますよ!僕は別に海さんのことは…。か、冠葉さんまで、そんな殺人鬼みたいな目で睨まないで下さいよ!僕はただヒロくんから聞いて知ってただけですから!」
ヒロ?
確か特攻にそんな名前の奴がいたな。
「ヒロに?いつ?」
「放課後です。桃くんと尚哉くんがいつもみたいに喧嘩してる間にヒロくんがこっそり教えてくれて」
「チッ、ヒロの奴…」
「駿河、海のことはすぐに俺に報告しろ」
「は、はい。すいません…」
「いや、別にお前が謝ることじゃねぇだろう」
「つ、つい条件反射で…」
「根っからの下僕体質だな」
豪快に笑うヒーくんを横目に僕はサクちゃんを視界に入れた。
その表情は先程までと変わらず後悔と自己嫌悪に満ちていた。
それでも海ちゃんの後を追わなかったのは余程よっちゃんの言葉が効いたんだろう。
『アンタにあたしの何が分かる』
あの目を、あの声を、あの表情を、僕は知らない。
刺々しい薔薇のような凛とした彼女の瞳はまるで氷のように冷たかった。