豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
フラつく脚を叱咤し、トイレへと向かう。VIPルームを出ると直ぐに感じた甘ったるい香りが、鼻につき気分が悪くなる。
益々、目眩は酷くなり足元も覚束なくなり、とうとうトイレ前の廊下にへたり込んでしまった。
天井が右に左にユラユラと揺れ、立ち上がろうとしても、全く脚に力が入らない。
「お姉さん、大丈夫ですか? 酔っちゃったみたいですね」
頭上から聞こえた声に肩が震える。かがみ込んで目線を合わせた彼の無邪気な笑顔に言い知れぬ恐怖を感じていた。
「一人じゃ立ち上がれないみたいですね。休める所に一緒に行きましょうか」
伸びて来た手を振り払うが、強い力で肩を掴まれる。可愛い顔をしていようとも男である。こんなフラフラの状態では抵抗らしい抵抗など出来ない。会ったばかりの女を口説くような男の目的なんて決まっている。もしかしたら飲んでいたお酒に細工をされていたのかもしれない。突然訪れた貞操の危機にも、身体に全く力が入らない状態では回避のしようもない。
助けに来なさいよ! 橘の馬鹿野郎が!!
奴の子飼いにまで、おもちゃ扱いされてたまるもんですか!!
溢れ出しそうになる涙を耐え、逃げ道を探し前を向いた時、細い廊下を塞ぐように足裏を壁にブチ当て、こちらを見据える奴と目が合った。
「……優《ゆう》、いい度胸してんな。そいつ、俺の女なんだけど、わかってるよなぁ?」
静かに響いた奴の声に、目の前の男の手が震え出す。
「ち、違います! 真紘さん。俺は何もしていません。誘って来たのは、お姉さんの方で。俺は断ったんです。でも離して……」
「うるせぇ。言い訳はいいわ! 失せろ!!」
腹の底を震わせるような怒声が響き、男が転がるように逃げて行く。
「――っで、鈴香はこんな所で何しているのさ?」
近づいて来る奴と目線が交わり、私の涙腺は崩壊した。
全てはコイツが悪いのに……
泣き崩れた私を抱き上げ、奴が歩く。身体を抱く力強い腕と嗅ぎ慣れてしまった匂いに安堵している自分が一番許せなかった。
益々、目眩は酷くなり足元も覚束なくなり、とうとうトイレ前の廊下にへたり込んでしまった。
天井が右に左にユラユラと揺れ、立ち上がろうとしても、全く脚に力が入らない。
「お姉さん、大丈夫ですか? 酔っちゃったみたいですね」
頭上から聞こえた声に肩が震える。かがみ込んで目線を合わせた彼の無邪気な笑顔に言い知れぬ恐怖を感じていた。
「一人じゃ立ち上がれないみたいですね。休める所に一緒に行きましょうか」
伸びて来た手を振り払うが、強い力で肩を掴まれる。可愛い顔をしていようとも男である。こんなフラフラの状態では抵抗らしい抵抗など出来ない。会ったばかりの女を口説くような男の目的なんて決まっている。もしかしたら飲んでいたお酒に細工をされていたのかもしれない。突然訪れた貞操の危機にも、身体に全く力が入らない状態では回避のしようもない。
助けに来なさいよ! 橘の馬鹿野郎が!!
奴の子飼いにまで、おもちゃ扱いされてたまるもんですか!!
溢れ出しそうになる涙を耐え、逃げ道を探し前を向いた時、細い廊下を塞ぐように足裏を壁にブチ当て、こちらを見据える奴と目が合った。
「……優《ゆう》、いい度胸してんな。そいつ、俺の女なんだけど、わかってるよなぁ?」
静かに響いた奴の声に、目の前の男の手が震え出す。
「ち、違います! 真紘さん。俺は何もしていません。誘って来たのは、お姉さんの方で。俺は断ったんです。でも離して……」
「うるせぇ。言い訳はいいわ! 失せろ!!」
腹の底を震わせるような怒声が響き、男が転がるように逃げて行く。
「――っで、鈴香はこんな所で何しているのさ?」
近づいて来る奴と目線が交わり、私の涙腺は崩壊した。
全てはコイツが悪いのに……
泣き崩れた私を抱き上げ、奴が歩く。身体を抱く力強い腕と嗅ぎ慣れてしまった匂いに安堵している自分が一番許せなかった。