豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
怖いのだ。ひとりぼっちだった自分に戻るのが怖くて仕方がなかった。昔の記憶が私を縛る。
恋愛とは無縁の生活。周りの友に次々と恋人が出来ていく中で、自分だけひとり取り残されていく感覚。陰で馬鹿にされていたのも知っていた。決して恋に興味が無かった訳ではない。きっと誰よりも恋に執着していたのだ。
そんな中、初めて出来た恋人。
全てが特別だった。一緒に過ごすありきたりな日常ですらキラキラ輝いて見えた。
失いたくなかった。
何度裏切られようと、一人になりたくなかった。
彼が心を入れ替え、私を愛してくれるなんて無いことも、彼のささやく甘い言葉が全て偽りだと分かっていても、自ら別れを切り出す勇気はなかった。
良い子のフリをして、恋人が望む女を演じ、捨てられないように彼の要求のまま、都合の良い女を演じる。分かっていた。過去の自分に囚われて身動きが取れないなんて馬鹿気ていると。ただ、一人の自分には戻りたくなかった。
あの時、別れていたら何か変わったのだろうか?
きっと変われなかった。同じことの繰り返しだっただろう。執着する相手が元彼から別の男に変わるだけだ。新しい恋人に合わせ、捨てられないように自分を偽る。そんな空虚な関係が続くだけ。
ただ、『橘真紘』の存在だけは違うのかもしれない。心に強烈な印象を刻み込んだ男。
元彼との別れに未練はない。あんなに執着していたのが嘘のように、思い出すことすらなくなった。
良い意味でも悪い意味でも『橘真紘』という存在が心に与えた影響は大きかった。元彼に支配されていた心をぶち壊し、橘真紘という存在を刻み込んだ。彼の前では、怒り、悲しみ、喜び、あらゆる感情を曝け出すことが出来た。
幼く、未熟な心を隠すため取り繕っていた仮面を剥がされ、弱く、脆い本来の私を暴かれる。誰にも見せた事のない本性を曝け出せる存在など今までいなかった。ありのままの自分でいられたのだ。
だからこそ特別な存在になっていた。
忘れることなんて出来ない……
自ら別れを切り出しておいて、未練がましく橘を想い続けるなんて自分の行動の馬鹿さ加減に嫌気がさす。
あの夜別れを切り出さなければ、あの居心地の良い場所は今でも私のモノだったのだろうか。
「ふふ、すぐ愛想尽かされて終わりね」
吉瀬さんの存在に疑心暗鬼になって逃げ出すような女、橘だってすぐ嫌になる。
結局、あの時から私は何も変わっていないのだ。
一人になるのが怖くて、自分を偽り続けたあの時から何も変わっていない。そして、今度は傷つきたくなくて、橘からも、吉瀬さんからも逃げ出した。
弱い自分なんか、大嫌い。でも、変わる勇気もない。
瞳を閉じればあふれ出した涙が頬を伝い、堂々巡りの思考を、訪れた闇が霧散させてくれた。
恋愛とは無縁の生活。周りの友に次々と恋人が出来ていく中で、自分だけひとり取り残されていく感覚。陰で馬鹿にされていたのも知っていた。決して恋に興味が無かった訳ではない。きっと誰よりも恋に執着していたのだ。
そんな中、初めて出来た恋人。
全てが特別だった。一緒に過ごすありきたりな日常ですらキラキラ輝いて見えた。
失いたくなかった。
何度裏切られようと、一人になりたくなかった。
彼が心を入れ替え、私を愛してくれるなんて無いことも、彼のささやく甘い言葉が全て偽りだと分かっていても、自ら別れを切り出す勇気はなかった。
良い子のフリをして、恋人が望む女を演じ、捨てられないように彼の要求のまま、都合の良い女を演じる。分かっていた。過去の自分に囚われて身動きが取れないなんて馬鹿気ていると。ただ、一人の自分には戻りたくなかった。
あの時、別れていたら何か変わったのだろうか?
きっと変われなかった。同じことの繰り返しだっただろう。執着する相手が元彼から別の男に変わるだけだ。新しい恋人に合わせ、捨てられないように自分を偽る。そんな空虚な関係が続くだけ。
ただ、『橘真紘』の存在だけは違うのかもしれない。心に強烈な印象を刻み込んだ男。
元彼との別れに未練はない。あんなに執着していたのが嘘のように、思い出すことすらなくなった。
良い意味でも悪い意味でも『橘真紘』という存在が心に与えた影響は大きかった。元彼に支配されていた心をぶち壊し、橘真紘という存在を刻み込んだ。彼の前では、怒り、悲しみ、喜び、あらゆる感情を曝け出すことが出来た。
幼く、未熟な心を隠すため取り繕っていた仮面を剥がされ、弱く、脆い本来の私を暴かれる。誰にも見せた事のない本性を曝け出せる存在など今までいなかった。ありのままの自分でいられたのだ。
だからこそ特別な存在になっていた。
忘れることなんて出来ない……
自ら別れを切り出しておいて、未練がましく橘を想い続けるなんて自分の行動の馬鹿さ加減に嫌気がさす。
あの夜別れを切り出さなければ、あの居心地の良い場所は今でも私のモノだったのだろうか。
「ふふ、すぐ愛想尽かされて終わりね」
吉瀬さんの存在に疑心暗鬼になって逃げ出すような女、橘だってすぐ嫌になる。
結局、あの時から私は何も変わっていないのだ。
一人になるのが怖くて、自分を偽り続けたあの時から何も変わっていない。そして、今度は傷つきたくなくて、橘からも、吉瀬さんからも逃げ出した。
弱い自分なんか、大嫌い。でも、変わる勇気もない。
瞳を閉じればあふれ出した涙が頬を伝い、堂々巡りの思考を、訪れた闇が霧散させてくれた。