大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
「そうだね、率直に言って興味はあるよ」

 複雑な気分が膨らんでいく。
 しかし同時に、そんなもやもやを抱える自分に軽く自己嫌悪した。
 もやもやするのは、見合いが意に添わないからではない。もっと別の、美空の事情によるものだった。
 それも多分、ひとに言えば一笑に付されてしまう程度のもの。
 だからそんな事情で父を悲しませたくはない。美空はため息をついた。

「……それで、いつ会えばいいの?」
「お、よかった、美空も興味を持ってくれたか。パパも、美空とおなじ会社のパイロットなら安心だ」
「なによ、安心って。会うだけだからね? 先走らないでね」

 念押しするも、父は早くも日取りを決める気だ。いそいそと手帳を開き、スケジュールを確認し始める。
 その表情は娘の見合い前の父親という雰囲気からはほど遠く、アイドルに合うかのようですらある。
 実際、一線で活躍する現役のパイロットは、父からすればアイドルなのかもしれない。

(……だけど)

 針先で繰り返し心臓を突かれたのに似た痛みに、顔がゆがむ。
 父の顔を立てるだけ。ほんとうに「会うだけ」。
 美空の頭にはこのとき、断る以外の選択肢は存在しなかった。
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