大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
 胸がきゅうっと締めつけられていく。

「……こういうときは、なんて言えばいいの?」
「はい、でよくない?」
「そうだけど違くて。わたしも管制のやりとりみたいにしたい。朋也が言ってくれたことあったよね。……Cleared to take offだっけ」
「それは離陸のとき。今は俺が美空の元に着陸したいわけだから、Cleared to landかな。ディスパッチャーになるには、航空無線の試験もあるんじゃなかった?」

 からかうような声に、美空は航空無線の試験に管制の会話は出ないと口を尖らせる。そのときやっと、頭にひとつのイメージがはっきりと浮かんだ。
 これからも美空は、こうして他愛ないやりとりも繰り返しながら、朋也と一緒に生きていくのだ。
 笑っても、泣いても、怒っても、互いに相手を受け止めて。
 朋也を大空に送り出し、戻ってきた彼を迎えるのだ。

「AP朋也, Cleared to land. あなたの帰る場所は、わたしです。ずっと……一緒にいて」
「Cleared to land AP朋也、俺の帰る場所は美空だけだよ。いつまでも」

 朋也が神妙な顔で復唱した直後、笑みを弾けさせる。笑いながら抱きしめられ、美空もまた朋也に腕を回した。
 笑い合い、ついばむようなキスを繰り返す。
 キスは徐々に濃密な気配を帯びていく。吐息が、甘ったるくまざり合う。
 めまいがするほどの幸せとは、今この状態に違いなかった。
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