大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが


     *

     
 意識の遠くのほうで、ピンポンという高い電子音が聞こえた。さらに間を空けてもう一度。
 自分がその音にどう反応したのか、記憶はゆらゆらと揺れてあいまいだ。

「木崎さん、木崎さ……美空、美空っ」

 泥に沈んでいる意識を引きあげようとする声が心地よい。誰だろう。
 美空は目をつむったまま、声の主に返答する。

「んん……」
「あー……よかった。ドアを開けてくれたのはありがたいけど、そのまま廊下で寝られると焦る。ほら、捕まって。ベッド行くよ」

 ふわ、と美空の体が浮遊感に包まれた。
 たくましい腕に、横抱きされているらしいと頭の隅で考える。まるで、幼い子どものころのようだ。美空は心地よい安心感に包まれ、されるがままに体を預けた。
 次に意識がはっきりしたとき、美空はベッドに寝ていた。
 二度まばたきをし、それから渇いた喉を鳴らす。カーテンから漏れる光はなく、とっくに夜も更けているようだった。
 身じろぐと、遠のいていた全身の怠さがたちまち戻ってくる。たまらず呻いたとき、寝室のドアがノックされた。
 返事をするまもなくドアが開き、足音が近づいてくる。

「っ……え?」

 美空は仰天して跳ね起き、鈍い頭痛に体を丸める。
 目の前にいるのは、朋也ではないか。

(どういうこと? わたし、呼んだっけ!? うそよ、そんなわけない)

 しかも朋也は制服を着たままだ。美空は混乱を極めたが、朋也はいっさいのためらいを見せずにベッドまでやってきた。

「あ、起きた? 具合はどう?」
「沖形さ……ど、ここ……」

 どうしてここにいるのかと訊きたいが、喉が痛くて声にならない。それでも朋也には通じたらしい。

「瀧上さんに、美空が風邪をこじらせていると聞いて来た。俺が来なかったらどうするつもりだったの。熱も高いし顔色も悪い……その様子じゃなにも食べてないね?」
「沖が……帰っ……」
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