もう一度 恋をするなら
プロローグ
街頭の明かりがまだにぎやかな時間帯の、道の片隅で私はずっとすきだった人と見つめ合っていた。
初めての恋だった。会えなくなって、子供だった私にはどうすることもできなくて、少し大人になったころにはもう彼がどこにいるのかもわからなくなっていた。
諦めて、何年も経って忘れたと思っていたのに、ひとめ会っただけであの頃の気持ちが簡単に溢れ出してくる。
弓木くんが、何かに気づいた様子で私に手を伸ばしてくる。直後、どんと背中に人がぶつかった。バランスを崩して前へ倒れこみそうになった瞬間、その直前に私は弓木くんの腕に抱き留められていた。
「ご、ごめん」
「大丈夫か?」
「うん、びっくりしただけ。ありがとう」
スーツの上からでも伝わる固い体の感触に、男らしい逞しさを感じた。すぐ目の前に弓木くんのつけているネクタイがあって、私の背中は彼の大きな手に支えられている。抱きしめられるような至近距離に慌てて距離を取ろうとしたけど、弓木くんの手は私を離さなかった。
時折行きかう人を避けて私の体を支えながら彼は道の端へ寄り、改めて私の背に両手を回す。強く抱きしめるような力ではないけれど、彼の腕に囲われているみたいだった。
「弓木くん」
見上げると、弓木くんの目が私をまっすぐ見下ろしている。眉間に少し力が入って、彼の真剣さが伝わってくるようだった。
「本当は今日、俺は今井さんに会いに来たんだ。彼氏がいるって聞いたけど、諦められなかった」
そんな人、いない。私は言葉が出ず頭を横に振る。
再会してからの彼の態度に私は戸惑い、落ち込みもした。嫌われている可能性も考えた。今更、初恋の名残に振り回されて、それでも止められなかった。
「ずっと、すきだった。伝えたかったのに、会えなくなって後悔した。ずっとそばにいたかったのに」
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