もう一度 恋をするなら

再会はある日突然


 ロッカールームで勤務時間までの合間、パックのコーヒーを飲みながらスマホを弄る。送ったメッセージの相手は幼馴染だ。
 あ、と気がついて続けざまにもうひと言送信した。

【改めまして、結婚おめでとう!】

 昨日、郵送で彼女から結婚披露宴の招待状が届いた。いち早く返信内容を伝えておきたかった。もちろん、結婚のことは以前から電話で聞いていたしその時に披露宴の出席も伝えてはあるのだけれど。
 しばらくスマホ画面を見ていたが、送信したメッセージにはまだ既読のマークは付かない。既に婚約者と同棲中という話だから、料理上手の彼女は朝食もきちんと作っているはずで、きっと朝は忙しいだろう。
 ひとり暮らしが長い私は、いい加減なものだった。最初の頃は張り切って作っていたものの、慣れてくると段々と手を抜くようになり、今はもっぱら外食かスーパーの総菜だ。何せ作っても喜ぶのは自分ひとり、サボっても咎める人間は誰もいない。
 気楽なのはひとり身の良いところだ。
 それなのに、思わず呟いていた。

「いいなあ」

 ちらちらと友人から結婚というワードを聞くことが多くなった今、やっぱり素直に羨ましい。
 あと、何人残ってるっけ?

 つい頭の中で、まだ独り身を守っている同胞の人数を数えてしまった。


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