[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
今でも、あの日の衝撃をはっきりと覚えている。ずっと腑に落ちなかった、ある“事実”を知ってしまった――
そう、なぜ私がハブられていたのかを。

あの夜、廊下で偶然聞いてしまった会話。
最初は、あの女の子のことだけかと思っていた。けれど、叔父たちの話題は、やがて“別の名前”に向けられた。


「それで、葵の件だが……」


その一言に、心臓が跳ねた。
えっ? 私の、件……?


耳を澄ますと、叔父たちのあいだで交わされる言葉が聞こえてきた。


「嫉妬」
「標的」
「女の世界は難しいな」


誰かが、こんなことを言った。


「まぁ、仕方ない面もある。あれだけ注目されていたら、ああなる」

「本人は無自覚でも、男子の視線が集まるのは事実だ」

「それに、“あの王子たち”の妹だ。逆恨みする女が出て当然だろう」


その瞬間、私はすべてを理解した。
あぁ、そういうことだったんだ。

私は、何もしていないと思っていた。
誰かを傷つけた覚えなんて、まるでなかった。けれど私の存在そのものが、“彼女たちの嫉妬”と“怒り”を買っていたんだ。

あの頃、私にやさしくしてくれた男子たち。
授業中も、休み時間も、いつも誰かの視線を感じていた。そして、私の兄たち『慶智の王子たち』の存在。

それが、彼女たちには“耐えられなかった”。

でも、それだけではなかった。
それに気づいたのは、もっとずっとあとになってからだ。

私がただ“近くにいた”というだけで、
すべての怒りと嫉妬を背負っていたこと。
それに気づいたのは、中等部に入ってすぐのことだった。

兄たち――あの『慶智の王子たち』は、どこか気まぐれで、どこか冷たかった。それでも、女の子たちは彼らを愛した。けれど、彼らは愛を返さなかった。軽い関係のあと、名も知らぬ顔で通り過ぎていく。

その痛みを、彼女たちは彼らにぶつけられなかった。だって、“好き”だったから。

だから、代わりに“妹”という、何も知らない私に向けられた。


「いいよね、家族ってだけで特別扱いされて」

「全部知ってるくせに、被害者ぶって」

「どうせ、あんたも同じ目で人を見てるんでしょ」


……私はただ、家族だっただけ。
一緒にいただけなのに。

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