[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
中等部一年の夏休み中、自宅で偶然耳にしてしまった、大家族の“話し合い”。

その日は文香の家にお泊まりの予定だった。
けれど、外出先で文香の体調が悪くなり、私だけが先に帰宅することになった。

門扉を開けて玄関へ向かう途中、車庫に並ぶ車の数を見てすぐにわかった。
大家族の叔父さんたちが集まっている、と。

お母さんは伊集院家の“女子会”に出かけていて不在だと聞いていたので、一応挨拶だけでも……と、私は客間の方へ向かった。

廊下から聞こえてくる男たちの低い話し声。
どうやら、ドアは少し開いているようだった。

邪魔にならないよう、静かに近づいたそのとき――ふと、耳に入ってきた内容に、私は立ち止まった。


これって、私が聞いてはいけない話?


私だけじゃない。お母さんや、他の叔母さんたちも。あぁ、だから私たち女性は、いつもあの場から“外されていた”んだ!

そのとき私は、小等部から親友だと思っていた女の子と、その家族。そして彼女の父親が経営している会社についての話を知った。



夏休み直前のこと。私は、仲が良かったはずのその子に、突然手のひらを返され――
体育館の階段から突き落とされ、足を捻挫した。

家族には『転んだ』としか言っていない。
誰がやったかも、なぜかも、私は一度も口にしていない。なのに夏休みが明け、学校へ行くと、あの子の姿はもうなかった。クラスでも、誰も彼女の話をしなかった。

やがてその家族も、まるで霧のように世間から姿を消していった。会社の名前も、広告も、看板も……気づけば何一つ見かけなくなっていた。

きっと、誰かが動いたのだ。
表には出ない形で、徹底的に制裁されたのだと、私は思っている。

あの日、たまたま聞こえてしまった会話。
そこで私は知ってしまった。

大家族のもうひとつの顔。
そして、慶智の王子たちの“裏の顔”を。
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