叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.5 もう1人の御曹司
ちょっと席を外して戻る途中、ここから少し距離のある三雲さんの姿が目に入った。
なんだか物思いに浸っているみたい。
もう少し経ってから戻った方がいいかなと、ほんの一瞬悩んだけど、静かに戻ることにした。
「おかえり」
「ただいまです」
席に戻ると、意外にも三雲さんの意識はすぐにこちらに向けられた。
「紗雪さん」
「はい」
「俺のこと、名前で呼んでくれないかな?」
…………
一時停止しておりました。
「いえ、無理です」
「即答……!? かなりショックなんだけど。えっ、なんで?」
なんでと言われましても……
「そんなに……親しくないですし……」
「さらに心を抉られた……これから名前を呼びながら、親しくなっていけばいいじゃないか」
なんでそんなに名前で呼ばれたがるのかわからない。
「でも……」
「紗雪……ちゃん?」
三雲さんが呼んだのではない。この人よりもう少し高めでふわりとした声だった。
そしてこの声には聞き覚えがある。
「和成くん!?」
「やっぱり、紗雪ちゃん!」
「カズナリ……くん?」
三雲さんの声にピリッとしたものを感じた。
天羽和成くんは、私と同じ24歳。
全国展開のカフェチェーン「カフェ・ミアーモ」を運営している株式会社AMOクリエイトコーポレーションの御曹司。
略してAMOCCは、カフェのみならずカジュアルから高級店までいくつものレストランを経営しており、この不況の折にも業績を伸ばしている数少ない存在だ。
店内レイアウトのセンスには定評があり、現在ではインテリアデザイン事業にも着手し、事業拡大を図っている。
「このカフェには企画段階から関わっていたから、気になってつい様子を見に来てしまうんだ」
聞けばレイアウトにも和成くんの案が採用されているということだ。
「店内の装飾の色合いが素敵で落ち着いた気分になれるね。置かれてる小物も可愛くて、ついじっと見ちゃうなぁ」
「紗雪ちゃんにそう言ってもらえるなんて……! こだわった甲斐があるよ」
和成くんはこんな私の言ったことにも胸を熱くしてくれるほど義理堅い人だった。
「紗雪ちゃん。こちらの方は……?」
先程からものすごく三雲さんの事を気にしている。
おそらく同じビジネスパーソンの気配を感じて、評価が気になるのだろう。
なんだか物思いに浸っているみたい。
もう少し経ってから戻った方がいいかなと、ほんの一瞬悩んだけど、静かに戻ることにした。
「おかえり」
「ただいまです」
席に戻ると、意外にも三雲さんの意識はすぐにこちらに向けられた。
「紗雪さん」
「はい」
「俺のこと、名前で呼んでくれないかな?」
…………
一時停止しておりました。
「いえ、無理です」
「即答……!? かなりショックなんだけど。えっ、なんで?」
なんでと言われましても……
「そんなに……親しくないですし……」
「さらに心を抉られた……これから名前を呼びながら、親しくなっていけばいいじゃないか」
なんでそんなに名前で呼ばれたがるのかわからない。
「でも……」
「紗雪……ちゃん?」
三雲さんが呼んだのではない。この人よりもう少し高めでふわりとした声だった。
そしてこの声には聞き覚えがある。
「和成くん!?」
「やっぱり、紗雪ちゃん!」
「カズナリ……くん?」
三雲さんの声にピリッとしたものを感じた。
天羽和成くんは、私と同じ24歳。
全国展開のカフェチェーン「カフェ・ミアーモ」を運営している株式会社AMOクリエイトコーポレーションの御曹司。
略してAMOCCは、カフェのみならずカジュアルから高級店までいくつものレストランを経営しており、この不況の折にも業績を伸ばしている数少ない存在だ。
店内レイアウトのセンスには定評があり、現在ではインテリアデザイン事業にも着手し、事業拡大を図っている。
「このカフェには企画段階から関わっていたから、気になってつい様子を見に来てしまうんだ」
聞けばレイアウトにも和成くんの案が採用されているということだ。
「店内の装飾の色合いが素敵で落ち着いた気分になれるね。置かれてる小物も可愛くて、ついじっと見ちゃうなぁ」
「紗雪ちゃんにそう言ってもらえるなんて……! こだわった甲斐があるよ」
和成くんはこんな私の言ったことにも胸を熱くしてくれるほど義理堅い人だった。
「紗雪ちゃん。こちらの方は……?」
先程からものすごく三雲さんの事を気にしている。
おそらく同じビジネスパーソンの気配を感じて、評価が気になるのだろう。