遠距離恋愛でも繋ぎ止めておきたい天然彼女が可愛いすぎる
久しぶり

「暑っつーい」

7月の最初の週の日曜日、江藤詩織(えとうしおり)はAアリーナの会場の前に大きなバドミントンバッグを背中にしょって立っていた。

今日は男子バスケの大会が開かれている。

高校を卒業して東京の実業団へバドミントン選手として入社して4年が経過していた。

「よっこいしょ、ふぅ」

大きなラケットバッグを1度下ろしてスマホとチケットを取り出した。

1件のLINEを開くと親友の青木怜奈(あおきれいな)からの通知

“先に席に座っておくね“

と書いてあって詩織は

“今着いた“

と打つと、すぐに既読がつき

“了解“

と可愛いスタンプが返ってきたのだ。

ふふっ、可愛い……

詩織は周りの人に見られている事も気にせず「よいしょ」とバドミントンバッグをまた背負って会場に入っていった。

165cmの身長で大きなラケットバッグを背に歩く詩織はチラッと周りの人に見られているが、もう見られる事に慣れてしまっていた。

別に見られても声を掛けられる事はなかったので特に気にしない。

「怜奈〜、4ヶ月ぶりだね」

席に着いた詩織はラケットバッグを下ろして怜奈の隣に座り、ラケットバッグは両足で挟み、他の人の邪魔にならないようにっと…

「詩織、久しぶり、試合開始までに間に合って良かったね……だけど、荷物は預けたら良かったのに」

「えっ、預ける?」

「そう、駅のコインロッカーとか、後輩にバッグだけ部室に持って帰ってもらうとかさー」

「……あっ、そっか!考えなかった、急いで行かなきゃってそれだけ考えてた」

「私が頼んでおけば良かったね」

「そんな、いいよ、自分が持つだけだから大丈夫、それより今日名古屋から上京してきたの?」

「昨日かな、今日の午前中に慎吾が会えるかもって聞いたから昨日の夕方からホテルに泊まってた」

怜奈も高校卒業から詩織と同じ実業団に入り、選手として活躍していたが去年怪我をして3月に退社

彼氏の川辺慎吾(かわべしんご)くんが高校卒業後に名古屋の実業団に所属していたため、婚約をして春から名古屋で川辺くんと住んでいるのだ。
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