暁に星の花を束ねて
提示地の原生植物はナノ技術と高い親和性を持つ。
市場独占、新薬開発、数兆単位のリターン。
GQTがそれを譲るという。


「市場独占に新薬特許、さらには調達コストの圧縮。……清廉を唱えるおまえの会社にも、欲望くらいはあるだろう」


宗牙は小型端末を操作し、空中に一枚のホログラムを映し出す。

 そこに映っていたのはナノ毒素によって脳機能を侵食されつつある人間の姿だった。
しかし死には至らず、徐々に回復に向う記録だった。

「これは……」

「我がカグツチが開発しているものだが……御社の施設内に限って、毒素が沈黙する。まるで、そこにだけ解毒の鍵があるようにな」

隼人の瞳が、宗牙の映し出したホログラムから彼の目元へと静かに移った。

「我々が中和酵素を極秘開発していると?」

声に一切の動揺はなかった。
ここに佐竹が同行していたら、こう言っていたに違いない。

『毒を撒いた奴が、薬の話とは笑わせる』
と。

「これは事実なんだがな、宗牙」

だがここに佐竹はおらず、隼人は口を開く。

「そんなものがあったら我々は真っ先に公表するし、当然医療現場にも引き渡す。それをしていないということが、答えだ」

常人なら目を逸らしていただろう。
だが隼人は逸らさない。
宗牙の口元に、またぞろ毒を含んだ笑みが浮かぶ。

「今日は優秀な芽がお互いに入ってきたようだな、隼人。……どちらが先に花を咲かせるか、楽しみにしているよ。誰の血で咲くのかが肝心だな」

隼人はホログラムの光が消えるのを見届けながら、ふと目を伏せた。

「……検討しよう」

低く、しかし確かな意志を込めたその一言だけが密室に残響した。

(やはり、おまえは放っておけないな。佐竹)

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