暁に星の花を束ねて
こうしてCEO同士の密談を終える頃ー。

同じ時刻、入社式の会場ではSHT講堂に続く通路に佐竹の姿があった。

密談の結果や、入社式を狙った講堂や各地のSHT関連施設でのテロ行為阻止報告が、耳元のワイヤレスマイクに次々と報告が届く。


「忌々しい連中に好かれるほど、気色悪いことはないな」


 歩みを止めずワイヤレスマイクを外すと、まるで汚れた証拠品でも捨てるように放る。

 GQTも、あるいはSHTでさえ読み違えたのは今日、遠ざけたこの男こそが、最も危険な兵器であるということだった。

 
 不遜な笑みを口の端に浮かべ、通路の先、聖域のように浮かぶ講壇へと歩を進める。

 
 そして辿りついた壇上に立つ。


 五千人の新入社員を前に、先ほどの好戦的な影はどこにもなかった。
柔らかな口調で——それでいて、威厳ある声音で語りかける。

 新入社員たちの視線が、一斉に壇上の佐竹に集まる。


「……新入社員の皆さん、スクナヒコナテクノロジーズへようこそ」



密やかな契りと、華やかな開幕。
その二つが交差する時『火と影の戦争』は幕を開ける。

既にその火種は、影の底でくすぶり始めていた。



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