暁に星の花を束ねて
病院に送られた佐竹に代わり、立ち会いをしていた片岡は、黙って装置の溶けた基板を見つめていた。

そこには細く焼け焦げた一本の配線。

佐竹蓮が自分の命を削って繋ぎ直した犠牲のライン。

片岡は拳を強く握りしめる。

「……部長……。こんな手まで使って、星野さんを……」

公安が首を振った。

「仕組みとデバイスを熟知していなければできなかったことだが……実際に自分の生体認証を噛ませるなんて、普通は誰もやらん」

その言葉に場の空気が一瞬重くなる。

戦略のメンバーは誰も何も云えず、片岡は深く静かに息を吸った。

赤い非常灯の明滅が破壊された装置を照らす。

そこには、ぎりぎりで守られた命と、一歩間違えば消えていた未来があった。

その光景は救出作戦の凄惨さと、佐竹の覚悟の深さを雄弁に物語っていた。

公安鑑識官が焼けた装置から視線を外し、低く別の公安員に問いかける。

「……で、GQTはどうなってる?
今回の誘拐は奴らの仕業ってことでいいのか?」

戦略部門、分析官の表情がわずかに強張る。

「状況証拠はほぼ黒です。
廃棄施設の土地所有権は第三者法人になっていますが、実態はGQT傘下のシェル企業でした」

公安の男は舌打ちした。

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