暁に星の花を束ねて
「やっぱりな。……奴ら、証拠の消し方が早すぎる」

警備班がタブレットを差し出す。

「こちらをご覧ください。
逃走ルートの痕跡、骸隠(むくろがくれ)が使う固定ルートと一致しました。 武装ドローンの残骸も、GQTの旧型兵器です」

「決定打だな」

「……いえ、決定打になりません」

片岡が静かに口を開く。

「残骸もルートも、GQTであれば当然残す痕跡ばかりです。 逆に云えば、あえて証拠を残しているとも取れる」

公安の眉が跳ね上がった。

「……は? どういう意味だ」

「ここまで露骨だと、濡れ衣の形に仕立てている可能性も高い。
つまり、誰かが『GQTの犯行』というストーリーを作りたいだけなのかもしれません」

周囲の空気が緊張で揺れる。

警備班の隊長が低く呟いた。

「じゃあ、GQTは?」

片岡は短く答えた。

「既に逃げているか、最初から関与していない振りをするか……どちらにせよ、向こうはもう次の手を打っています」

公安の男は深く息を吐く。

「クソ……。
このままじゃ逮捕状の申請も怪しいな。
連中、外交特権のように国際契約盾にするし……」

「広報戦略局が声明を出しました」

戦略の通信員が報告する。

「当社は今回の事件に一切関知しておらず、むしろ遺憾の意を示すとのことです。 ……保身と遁走を兼ねた、完璧な文面です」

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