暁に星の花を束ねて

葵、脱走する

「ごめん! わたしちょっと、外の空気吸ってくるね!」
「あ、え? 星野さん!?」

唖然とする結衣を尻目に葵は反射的にバッグを掴むと、一目散にロッカールームから転がるように飛び出した。

慣れた足取りで誰にも見つからない裏通路を抜け、建物の影を縫うように駆け、近くの公園へたどり着く。

ベンチに倒れ込むように腰を下ろし、眩しいほどの太陽を仰いだ。

肩で息をつき、ほんのひととき、勝利の優越感が胸を満たす。

「……はぁ、はぁ……やった、ここまでくれば……」

「回り道は楽しかったか? 星野葵」

背後から投げかけられた声は、逃げ場を塞ぐ冷徹な鎖のようだった。

振り向く間もなく長身の男が隣にどかりと腰を下ろす。

黒髪に切れ長の双眸。
完璧に仕立てられたスーツ。
その存在は、ただそこにいるだけで場の重力を変えていた。

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