暁に星の花を束ねて

花弁が散る前に

その頃、カグツチ未来交易戦略機構─。


室内は黒い艶やかな石材で統一され、壁一面に広がる巨大ホログラムディスプレイだけが無機質な光を放っていた。

「……結局、すべて掻き消されたか。さすがは氷の参謀と呼ばれるだけのことはある」

低く響いたその声は、まるで溶けることのない灼熱の鉄を冷やす氷水のようだった。

中央のラウンジチェアに腰を沈めていたのは、他でもない紅蓮院宗牙。
赤茶の髪は緩やかに肩口で波打ち、瞳は冷たく光を弾いている。

その前には、顔を伏せた部下が膝をついていた。

GQT直属特殊部隊『骸隠(むくろがくれ)』の中でも最精鋭とされる一人、紫(むらさき)のコードを持つ工作員だ。

「申し訳ありません。入社式、ルミナリウム・ガーデン、いずれも失敗。……追跡者も……処理されました」

「処理ね……」

宗牙は長く息を吐き指先でグラスを弄ぶ。
中には琥珀色の液体が揺れ、まるで血のようにグラスの縁を濡らしていた。

「少名彦は腑抜けだが、あの氷の参謀は違う。……まったく面倒な玩具を育ててくれたものだな」

彼は口元にわずかな笑みを浮かべ、椅子の背に身を預けた。

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