暁に星の花を束ねて
「敵を完全に阻止できなかった。それは、おまえがいなかったことに起因する」

突きつけられた言葉に、玉華は黙したまま唇を噛みしめる。
その姿は美しくも痛ましく、葵の心をさらにざわつかせた。

「言い訳は不要だ。次はないと思え」

玉華が沈黙し、葵が息を呑む。
その空気の中で、佐竹はふと視線を上げ、遠く会場出口を見やった。

低い声が、誰にともなく落ちる。

「……おれと星野葵を両方消す。そんなところだろう」

冷たい眼差しに、わずかな嘲りが混じる。

「単純だな」

短く吐き捨てるその声音に、葵は胸を掴まれたように息を止めた。

隣で立ち尽くす玉華は、主の冷徹な洞察に微かに眉を伏せた。
佐竹はなおも表情を変えない。

その横顔には、恐怖も怒りもなく──ただ「次を待ち受ける」鋼の静けさが漂っていた。


< 50 / 198 >

この作品をシェア

pagetop