暁に星の花を束ねて
「そして、もう一匹、檻の隙間から顔を覗かせている若獣もいるようです」

東アナスタシアが淡々と告げる。
その言葉は、確かな観測者の語調だった。

「……少名彦の血か」

暁烏が応じた。
眼鏡の奥の瞳が一瞬だけ、揺らめく。

宗牙はふっと鼻で笑った。

「名ばかりの王の血筋にしては、ずいぶんとせわしないな。だが、そういう芽は悪くない。何かを壊したがっている者は、使い道がある」

東が静かに視線を伏せる。

「問題は、彼が壊したいものが誰の檻なのか……まだ定かではありません……だからこそ、檻の外から崩す必要があるのです」

その声音は冷たいながらも、確かに愉悦の気配を含んでいた。

「崩すのではなく喰らう。咀嚼し、溶かすまでです」

暁烏が呟いたとき、宗牙は静かに庭園の闇へと姿を消した。

「この喜劇。どのように幕を引くのだろうな」

琥珀色の液体がグラスの内側を細く伝い、やがてその場に重たい静寂が戻ってきた。







< 61 / 249 >

この作品をシェア

pagetop