暁に星の花を束ねて
地上に広がる光の海すら、彼にとっては取るに足らない玩具のように見えた。

「首輪も鎖も効かぬ猛犬。抑え込むには檻ごと作り変えるしかない……そう考えたのだろうが」

グラスの中で氷が乾いた音を立てる。
宗牙は細く目を細め、嗤う。

「檻の中でも猛犬は吠える。牙を研ぎ、やがてその鉄格子ごと噛み砕く…… 自分で作った檻が、自らの棺となるとも知らずにな」

そのとき庭園の奥の電子扉が静かに開き、もうひとりの影が足音もなく現れた。

「それを好んで見に行くご趣味、素敵です」

現れたのは暁烏真澄(あけがらす ますみ)。

緋色のレンズ越しに世界を見下ろす諦観の男。
GPT情報戦略局を束ねる、沈黙の参謀である。

「葬送の下調べ……? それとも、勝利宣言のリハーサルとでもいうべきでしょうか」

「どちらもだよ、暁烏。……いや、今夜は少し、回顧録の編集も兼ねてな」

宗牙は愉快そうに笑い、東と暁烏を交互に見やった。

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