暁に星の花を束ねて
薔薇の棘、影の傷

告白なき告白

時は進み─
ルミナリウム・ガーデンは初夏を迎えていた。

湿度を孕んだ空気の中、庭園中心にそびえる巨大な薔薇のアーチは、今まさに満開を迎えようとしていた。

蔦は力強く伸び蕾は重みを増して枝をしならせる。

その手入れにあたっていたのは、新入社員の星野葵だった。

「……暑い……」

鍔の長いガーデンハットの下、汗が額を流れる。

生成色のエプロンはところどころに土や水の跡が滲み、長袖のシャツは湿気で重たくなっていた。

薔薇の剪定は甘く見てはいけない。

棘は鋭く油断すればすぐに皮膚を裂く。
真夏でも袖をまくることすらできなかった。

「あと少し……ここを剪定したら、水やり……」

脚立の上で剪定ばさみを構える。
その表情は汗に濡れながらも、研究員らしい集中を帯びていた。

そのときだった。

視界の端に黒いシャツの男が映る。
温室の通路をゆっくりと歩いているのは、佐竹蓮だった。

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