暁に星の花を束ねて
二面の巨塔

戦略弾(ストラテジック・バレット)

メガシティ・トーキョーの地表から数十メートル下。


SHTは医療、生物兵器、クローニング技術などで世界をリードする超巨大企業である。

だが同時に、その膨大な資金力と研究基盤を背景に、武器開発にも手を伸ばしていた。

「人類を救う技術」と「人類を滅ぼしうる技術」を両立させることこそが、企業としての生存戦略。

その冷徹な論理は創業以来脈々と受け継がれている。

表向きには生体研究のための安全隔壁施設とされているが、実際にはそれだけではない。

医療を支える知見が戦場での治療に直結するように、生命科学の延長線上には必然的に兵器開発が存在する。

その矛盾と二面性を最も象徴する場所が、この地下射撃実験区画だった。

戦略部門が極秘に運用する射撃場。

冷却金属の床に銃声が反響するたび、計測機器の数値が瞬時に変化し、記録装置が低く唸りを上げる。

戦略部門が極秘に運用する地下射撃実験区画。

冷却金属の床に銃声が反響するたび、計測機器の数値が瞬時に変化し、記録装置が低く唸りを上げる。

ここはSHTが武器開発すらも水面下で進めていることを示す、象徴的な区画であった。

人間を救い、同時に滅ぼす可能性を孕む技術を並行して育てる。

その二面性こそがこの巨大企業の真の姿であり、外部に知られることは決してない。

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