暁に星の花を束ねて
《カオス・カリクス》。

それはまるで呼吸する獣のように毒を溜め込み、いつ爆ぜるとも知れぬ命の時限爆弾だった。

NSRV-4型(現行型)という毒素を作り出し、症状進行は制御不可能。

現在、治癒不可能なナノ毒の一種とされている。
それを改良したものだというわけだが……。

佐竹は目を細め、その場の空気ごと切り裂くように問いただした。

「……ここの座標は?」

暁烏が淡く笑みを浮かべる。

「ご安心を。ただの管理されたフィールドテストです。すでに抑制プロトコルも適用済み。被害は最小限に抑えられています」

「その最小限という言葉は、何人までが許容範囲なんです?」  

フィールドテスト。

それは地図に二度と戻らない場所を生む言葉だ。

新型ナノ毒を実地に放ち、生態系と人間社会への影響を「検証」する。
失われる命も、壊れる街も、すべては「データ」として処理されるだけの恐ろしい行為。

最小限の被害など統計上の誤差に過ぎない。
そういう考えだった。

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