夏の日の研究室
七月、日曜日の昼下がり。私はコンビニで1人「うーん」と頭を捻らせていた。
ここ最近、私が見つけた新作のお菓子をアルト達と食べてみるのが、月曜日のちょっとした恒例行事になっていた。
私が休憩時間に食べていたお菓子を、義体を手に入れたばかりの皆にお裾分けしていた事がきっかけだ。期間限定味のチョコレートや、新作のグミなど。皆の食の好みが知れて、ちょっと面白い。
まぁそんな訳で、明日持って行くお菓子を買いに来たのだが…。
「どうしようかなぁ」
持って行くお菓子が、なかなか決まらない。
「(グミは先週持っていったし、最近暑いからチョコとかクッキーはちょっと…)」
むむむ…。と思案しながら店内を歩き回っていると、ある物が目に留まる。
「(これだ!)」
私はその商品を手に取り、意気揚々とレジに向かうのだった。
そして、月曜日の昼休憩。私のもとにアルト達が集まってくる。
「せーんせ!今日はどんなお菓子買ってきたの?」
甘えんぼうなアルトが、目をキラキラさせながら問いかける。
「ふっふっふ。今日はとっておきを持ってきたよ!」
「ふむ。とっておき、か?」
大人っぽいアルトが、そう言って興味深そうにこちらを見た。
他のアルト達も、それぞれ期待した様にこちらに目を向ける。
そんな彼らの視線を受けながら、私はふくらんだ保冷バックを取り出した。
中には、大量の保冷剤と…。
「じゃじゃーーん!アイスだよ!」
そう。私が持ってきたのは、パキッと2つに分けられる、チューブ型のあのアイス。
「アイス!?やったぁ!僕、食べてみたかったんだよね〜」
「あ!俺、このアイス見たことある。前南棟のやつが美味しそうに食べてたんだよな〜これ」
「俺も見たことあるぜ。まぁ、テレビの広告だけどな」
「あぁ、それなら俺も見たことがある。実物はこんな感じなんだな」
皆興味深そうに、キラキラした目でアイスをみている。
「ふふ、私もこのアイスお気に入りなんだ。食べやすいし…何より美味しいんだよ」
そう言って、保冷バックからさらに2袋取り出す。
「先生!開けてもいいか?」
やんちゃなアルトが待ち切れないと行った様子でこちらを見る。
「うん。どうぞ食べて」
「やったー!ねぇ、僕パキッてやりたーい!」
「なぁ、俺もやってみていいか?ちょっと興味ある」
「もちろん。はい、どうぞ」
私は甘えんぼうなアルトと恥ずかしがり屋なアルトに袋を手渡した。
アイスを受け取った2人は手探りで容器を分けると、おぉ!と声を漏らした。
「すご〜いっ。分かれた!!」
「すげー。なんか気持ちいいな、これ」
満足そうに笑う2人。彼らからアイスを受け取った2人も、興味深そうに目を輝かせている。
ピピピピピ
ふと、スマホが着信を告げた。
「電話みたい。ごめんアルト達、先に食べてて」
ブブブと振動するスマホを手にとって、私は研究室の外へ移動した。
―――
「先生、いっちゃったな」
「さ、食べよ食べよっ!僕、待ち切れな〜い!」
「あぁ、そうだな。頂くとしよう」
アルト達は揃ってアイスに口をつけ…顔を見合わせた。
「「「「おいしい!/うまいな」」」」
初めて食べるアイス。甘くて冷たいそれは、彼らにとってとても新鮮で、皆あっという間に平らげてしまった。
「ん〜!おいしかった!」
「あぁ、正直ここまでとは…また食べたいな」
「俺もこれ気に入ったわ。後で先生に、どこで売ってんのか聞いてくる」
「俺も俺、も…」
その瞬間、感想を語り合うアルト達の口が止まり、視線が一点に集中した。
そう。先生が買ってきたアイスは一袋2本入り。それを3袋買ってきたから、先生の分を除いて、アイスがあと1本残っているのである。
「…1本余ってるね」
「あぁ。1本余っているな」
「…そうだな」
「余っているな…」
ピリピリした空気が流れ出す。
「余らせちゃうのも勿体ないしさ…僕が食べてもいいよね?」
ねっ?とかわいく上目遣いをするアルト。すかさず
「いや、ここは兄である俺が責任を持って頂こう」
と、クールなアルトが言うと
「はぁ!?同時に稼働したんだから兄も弟もねぇだろ!…つーわけで、俺がもらうぜ」
「えっ、俺も食べたいんだけど!」
あっという間に言い合いに発展してしまった。このままでは埒が明かない。皆そう思ったのか、誰かが言うでもなく拳を握った。
―――
電話に出ると、相手は南棟の研究員だった。あるデータの確認のようだ。
「はい、どうしましたか?」
研究の話に集中していると、研究室から賑やかな声が聞こえてきた。
「…はい………わかりました。ありがとうございます。後で研究室にお伺いしますね」
電話を切り、研究室に向かおうとすると…。
「君、こんなところでどうしたの?」
北斗に声をかけられた。
「北斗さん!こんにちは。ちょっと電話で…。あ、そうです。実は今日アイスを持ってきたんですけど、余っているので一ついかがですか?」
「いいの?じゃあ、頂こうかな」
北斗さんは、にっこり笑ってそう答える。ケーキとか桜餅も美味しそうに食べてたし、意外と甘い物が好きなんだろうか。
「ありがとうございます。皆も食べてるので、一緒に食べましょう!」
「うん、そうさせてもらうよ。それにしても…なんだか賑やかだね」
「そうですね。これは…かけ声?」
研究室は防音性が高いはずなんだけど…何かゲームでも始めたのかな?と、頭にはてなマークを浮かべながら研究室の扉を開けると
「「「「あいこでしょ!しょ!!!しょ!!!!!」」」」
アルト達がじゃんけんをしていた。しかも、ずっとあいこ。
「皆ただいま。一体どうしたの?」
アルト達のの動きが止まる。
「あのね。アイスが1本余ってるから、誰が食べるかを決めようと思って…」
「話し合いじゃ埒が明かねぇから、じゃんけんで決めようとしたんだけどさ…」
「じゃんけんも、あいこ続きで決まらなくてさ。あはは〜、俺達めっちゃ相性いいじゃん」
「まぁ、そういう訳だ…。ふむ、これは相性が良いと言えるのだろうか?」
四人とも、少しバツの悪そうに視線を逸らす。
そのアイス、北斗さんの分なんだけどな…。いや、アルト達に話してなかった私が悪い。ちょっと言いにくいけど…ここはちゃんと言わないと。
「えーっと。アルト、私の説明不足だったんだけど、実はね…」
それは北斗さんの分で…と言おうとすると、北斗さんがこっそりこちらにウインクをした。
「ねぇ君。このアイス、俺が貰ってもいいかな?ちょうど甘い物が食べたくてさ」
「えっ」
驚いた私に向かって「合わせて」と、視線で促してくる。
「あっ、はい!もちろんどうぞ…アルト達も、いいよね?」
アルト達は一瞬驚いた様な顔をしたものの、すぐに頷いてくれた。
「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくよ」
けれど、皆はまだ少し残念そうな顔をしている。そんなにこのアイスが気に入ったのだろうか?…そうだ。
「実は、このアイスって他にも違う味があるんだよ」
「「「「そうなの/そうなのか!?」」」」
私がそう言うと、残念そうだった顔が、驚きと期待の混ざった表情に変わった。
「うん。だから、来週はそれを買ってきてあげる」
「わーい!!先生だ〜いすきっ!」
甘えんぼうなアルトが私に抱きつく。
彼を頭をよしよしと撫でながら、来週はどのお菓子を買うか悩まずに済む…!と、ちょっと安心するのだった。
ここ最近、私が見つけた新作のお菓子をアルト達と食べてみるのが、月曜日のちょっとした恒例行事になっていた。
私が休憩時間に食べていたお菓子を、義体を手に入れたばかりの皆にお裾分けしていた事がきっかけだ。期間限定味のチョコレートや、新作のグミなど。皆の食の好みが知れて、ちょっと面白い。
まぁそんな訳で、明日持って行くお菓子を買いに来たのだが…。
「どうしようかなぁ」
持って行くお菓子が、なかなか決まらない。
「(グミは先週持っていったし、最近暑いからチョコとかクッキーはちょっと…)」
むむむ…。と思案しながら店内を歩き回っていると、ある物が目に留まる。
「(これだ!)」
私はその商品を手に取り、意気揚々とレジに向かうのだった。
そして、月曜日の昼休憩。私のもとにアルト達が集まってくる。
「せーんせ!今日はどんなお菓子買ってきたの?」
甘えんぼうなアルトが、目をキラキラさせながら問いかける。
「ふっふっふ。今日はとっておきを持ってきたよ!」
「ふむ。とっておき、か?」
大人っぽいアルトが、そう言って興味深そうにこちらを見た。
他のアルト達も、それぞれ期待した様にこちらに目を向ける。
そんな彼らの視線を受けながら、私はふくらんだ保冷バックを取り出した。
中には、大量の保冷剤と…。
「じゃじゃーーん!アイスだよ!」
そう。私が持ってきたのは、パキッと2つに分けられる、チューブ型のあのアイス。
「アイス!?やったぁ!僕、食べてみたかったんだよね〜」
「あ!俺、このアイス見たことある。前南棟のやつが美味しそうに食べてたんだよな〜これ」
「俺も見たことあるぜ。まぁ、テレビの広告だけどな」
「あぁ、それなら俺も見たことがある。実物はこんな感じなんだな」
皆興味深そうに、キラキラした目でアイスをみている。
「ふふ、私もこのアイスお気に入りなんだ。食べやすいし…何より美味しいんだよ」
そう言って、保冷バックからさらに2袋取り出す。
「先生!開けてもいいか?」
やんちゃなアルトが待ち切れないと行った様子でこちらを見る。
「うん。どうぞ食べて」
「やったー!ねぇ、僕パキッてやりたーい!」
「なぁ、俺もやってみていいか?ちょっと興味ある」
「もちろん。はい、どうぞ」
私は甘えんぼうなアルトと恥ずかしがり屋なアルトに袋を手渡した。
アイスを受け取った2人は手探りで容器を分けると、おぉ!と声を漏らした。
「すご〜いっ。分かれた!!」
「すげー。なんか気持ちいいな、これ」
満足そうに笑う2人。彼らからアイスを受け取った2人も、興味深そうに目を輝かせている。
ピピピピピ
ふと、スマホが着信を告げた。
「電話みたい。ごめんアルト達、先に食べてて」
ブブブと振動するスマホを手にとって、私は研究室の外へ移動した。
―――
「先生、いっちゃったな」
「さ、食べよ食べよっ!僕、待ち切れな〜い!」
「あぁ、そうだな。頂くとしよう」
アルト達は揃ってアイスに口をつけ…顔を見合わせた。
「「「「おいしい!/うまいな」」」」
初めて食べるアイス。甘くて冷たいそれは、彼らにとってとても新鮮で、皆あっという間に平らげてしまった。
「ん〜!おいしかった!」
「あぁ、正直ここまでとは…また食べたいな」
「俺もこれ気に入ったわ。後で先生に、どこで売ってんのか聞いてくる」
「俺も俺、も…」
その瞬間、感想を語り合うアルト達の口が止まり、視線が一点に集中した。
そう。先生が買ってきたアイスは一袋2本入り。それを3袋買ってきたから、先生の分を除いて、アイスがあと1本残っているのである。
「…1本余ってるね」
「あぁ。1本余っているな」
「…そうだな」
「余っているな…」
ピリピリした空気が流れ出す。
「余らせちゃうのも勿体ないしさ…僕が食べてもいいよね?」
ねっ?とかわいく上目遣いをするアルト。すかさず
「いや、ここは兄である俺が責任を持って頂こう」
と、クールなアルトが言うと
「はぁ!?同時に稼働したんだから兄も弟もねぇだろ!…つーわけで、俺がもらうぜ」
「えっ、俺も食べたいんだけど!」
あっという間に言い合いに発展してしまった。このままでは埒が明かない。皆そう思ったのか、誰かが言うでもなく拳を握った。
―――
電話に出ると、相手は南棟の研究員だった。あるデータの確認のようだ。
「はい、どうしましたか?」
研究の話に集中していると、研究室から賑やかな声が聞こえてきた。
「…はい………わかりました。ありがとうございます。後で研究室にお伺いしますね」
電話を切り、研究室に向かおうとすると…。
「君、こんなところでどうしたの?」
北斗に声をかけられた。
「北斗さん!こんにちは。ちょっと電話で…。あ、そうです。実は今日アイスを持ってきたんですけど、余っているので一ついかがですか?」
「いいの?じゃあ、頂こうかな」
北斗さんは、にっこり笑ってそう答える。ケーキとか桜餅も美味しそうに食べてたし、意外と甘い物が好きなんだろうか。
「ありがとうございます。皆も食べてるので、一緒に食べましょう!」
「うん、そうさせてもらうよ。それにしても…なんだか賑やかだね」
「そうですね。これは…かけ声?」
研究室は防音性が高いはずなんだけど…何かゲームでも始めたのかな?と、頭にはてなマークを浮かべながら研究室の扉を開けると
「「「「あいこでしょ!しょ!!!しょ!!!!!」」」」
アルト達がじゃんけんをしていた。しかも、ずっとあいこ。
「皆ただいま。一体どうしたの?」
アルト達のの動きが止まる。
「あのね。アイスが1本余ってるから、誰が食べるかを決めようと思って…」
「話し合いじゃ埒が明かねぇから、じゃんけんで決めようとしたんだけどさ…」
「じゃんけんも、あいこ続きで決まらなくてさ。あはは〜、俺達めっちゃ相性いいじゃん」
「まぁ、そういう訳だ…。ふむ、これは相性が良いと言えるのだろうか?」
四人とも、少しバツの悪そうに視線を逸らす。
そのアイス、北斗さんの分なんだけどな…。いや、アルト達に話してなかった私が悪い。ちょっと言いにくいけど…ここはちゃんと言わないと。
「えーっと。アルト、私の説明不足だったんだけど、実はね…」
それは北斗さんの分で…と言おうとすると、北斗さんがこっそりこちらにウインクをした。
「ねぇ君。このアイス、俺が貰ってもいいかな?ちょうど甘い物が食べたくてさ」
「えっ」
驚いた私に向かって「合わせて」と、視線で促してくる。
「あっ、はい!もちろんどうぞ…アルト達も、いいよね?」
アルト達は一瞬驚いた様な顔をしたものの、すぐに頷いてくれた。
「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくよ」
けれど、皆はまだ少し残念そうな顔をしている。そんなにこのアイスが気に入ったのだろうか?…そうだ。
「実は、このアイスって他にも違う味があるんだよ」
「「「「そうなの/そうなのか!?」」」」
私がそう言うと、残念そうだった顔が、驚きと期待の混ざった表情に変わった。
「うん。だから、来週はそれを買ってきてあげる」
「わーい!!先生だ〜いすきっ!」
甘えんぼうなアルトが私に抱きつく。
彼を頭をよしよしと撫でながら、来週はどのお菓子を買うか悩まずに済む…!と、ちょっと安心するのだった。