#shion【連載中】
12月24日。イブのクリスマスマーケットは、すごい混雑だった。
気をつけて歩かないと、すぐに人の背中にぶつかりそうになるほどの人波。
先頭を歩く三角さんは、片手にぐるぐる巻きのソーセージ、もう片手にプレッツェルを持って、早くもマーケットを満喫していた。
あまり興味がなさそうな高瀬でさえ、いつもより少し饒舌だった。クリスマスという、街全体が浮き足立つ空気に呑まれたのかもしれない。
僕たちは、イルミネーションやオーナメントを眺めながら、屋台の食べ物や雑貨を見て回った。
僕は言葉少なに、ギフト系の小物が並ぶ店先で、じっと商品を見つめていた。
「律くん、最近ずっと元気ないね」
桜井さんは、家族へのプレゼント選びを終えたらしく、クリスマスカードを真剣に選んでいる僕にそっと声をかけてくれる。
「……うん」
嘘が下手な僕は、素直に頷くしかなかった。さくらも、それ以上は何も聞いてこなかった。
「りっつん、あっちの店にマフラー売ってたよ。さっき、小物探してたっぽいし、行ってみる?」
三角さんが、にっと笑って僕の頭をぽんと撫で、買ったばかりのチョコレートを渡してくれる。
さくら以外の二人───三角さんも、高瀬も、口には出さないけど、僕の元気のなさを気にかけてくれていた。
以前の僕なら、きっと気付かなかった。でも今は、それをちゃんと察することができる。
司音が、閉じていた僕の世界を明るく照らしてくれたから
「うん、ありがと、三角さん。行ってみても、いいかな?」
「もちろん! 元気ないときは甘えていいんだからね? とりあえず、このチョコ食べな」
「……三角、アメ持ち歩いてるおばちゃんか……。でもまぁ、話くらいは聞くよ、律」
「ね、律くん、あっちの店にはぬいぐるみもたくさんあったよ」
三人の優しさに、涙腺がゆるむ。
うん、うん、と、何度も頷いた僕は、その店でクリスマスカードを買った。
次に案内された店には、セーターや手袋、手編みのぬいぐるみなど、身につけられる小物がぎっしり並んでいた。
「さくらは、クリスマス、好き?」
マフラーを巻いた可愛らしいトナカイを手に取りながら、僕は尋ねた。
「うん。好きだよ。……みんな、子どもの頃から“素敵なことが起こる日”って、記憶に刷り込まれてる感じあるよね」
「プレゼントに、何日も前から用意されるごちそう……」
「ふふ、律くんのお母さん、きっと料理上手なんだね。
うちは当日にケーキやチキン買うくらい。でも、それだけでも子ども心にはワクワクしてたなぁ。海外は七面鳥なんだよね? すっごく大きいやつ」
「……特別な日。素敵なことが、起こる日……」
僕は三十分もかけて、その店でプレゼントを選んだ。
長い時間、三人を付き合わせてしまって申し訳ないと思いながら。
「律くん」
夕方、別れ際。さくらが僕に声をかける。
真剣な表情でじっと見つめたあと、ふっと微笑んで言った。
「それ、きっと喜んでくれるよ。───律くんの、大切な人なら絶対に!」
気をつけて歩かないと、すぐに人の背中にぶつかりそうになるほどの人波。
先頭を歩く三角さんは、片手にぐるぐる巻きのソーセージ、もう片手にプレッツェルを持って、早くもマーケットを満喫していた。
あまり興味がなさそうな高瀬でさえ、いつもより少し饒舌だった。クリスマスという、街全体が浮き足立つ空気に呑まれたのかもしれない。
僕たちは、イルミネーションやオーナメントを眺めながら、屋台の食べ物や雑貨を見て回った。
僕は言葉少なに、ギフト系の小物が並ぶ店先で、じっと商品を見つめていた。
「律くん、最近ずっと元気ないね」
桜井さんは、家族へのプレゼント選びを終えたらしく、クリスマスカードを真剣に選んでいる僕にそっと声をかけてくれる。
「……うん」
嘘が下手な僕は、素直に頷くしかなかった。さくらも、それ以上は何も聞いてこなかった。
「りっつん、あっちの店にマフラー売ってたよ。さっき、小物探してたっぽいし、行ってみる?」
三角さんが、にっと笑って僕の頭をぽんと撫で、買ったばかりのチョコレートを渡してくれる。
さくら以外の二人───三角さんも、高瀬も、口には出さないけど、僕の元気のなさを気にかけてくれていた。
以前の僕なら、きっと気付かなかった。でも今は、それをちゃんと察することができる。
司音が、閉じていた僕の世界を明るく照らしてくれたから
「うん、ありがと、三角さん。行ってみても、いいかな?」
「もちろん! 元気ないときは甘えていいんだからね? とりあえず、このチョコ食べな」
「……三角、アメ持ち歩いてるおばちゃんか……。でもまぁ、話くらいは聞くよ、律」
「ね、律くん、あっちの店にはぬいぐるみもたくさんあったよ」
三人の優しさに、涙腺がゆるむ。
うん、うん、と、何度も頷いた僕は、その店でクリスマスカードを買った。
次に案内された店には、セーターや手袋、手編みのぬいぐるみなど、身につけられる小物がぎっしり並んでいた。
「さくらは、クリスマス、好き?」
マフラーを巻いた可愛らしいトナカイを手に取りながら、僕は尋ねた。
「うん。好きだよ。……みんな、子どもの頃から“素敵なことが起こる日”って、記憶に刷り込まれてる感じあるよね」
「プレゼントに、何日も前から用意されるごちそう……」
「ふふ、律くんのお母さん、きっと料理上手なんだね。
うちは当日にケーキやチキン買うくらい。でも、それだけでも子ども心にはワクワクしてたなぁ。海外は七面鳥なんだよね? すっごく大きいやつ」
「……特別な日。素敵なことが、起こる日……」
僕は三十分もかけて、その店でプレゼントを選んだ。
長い時間、三人を付き合わせてしまって申し訳ないと思いながら。
「律くん」
夕方、別れ際。さくらが僕に声をかける。
真剣な表情でじっと見つめたあと、ふっと微笑んで言った。
「それ、きっと喜んでくれるよ。───律くんの、大切な人なら絶対に!」