アリのように必死に。 そして、トンボのように立ち止まったり、後戻りしながら。 シジミチョウのように、柔らかな青に染まった翅を自在に動かして、私は飛んでいく。

27

 リュックに昆虫観察ノートと筆記用具を詰めて、家を出た。

 昨日の夜のリュックは、ワクワクして、運動苦手なのにバトミントンのラケットやボールやら、いろんなものが入って、締まらないほどだった。

 今日の朝、さすがに恥ずかしい、と思い直し、最終的に必要なものに落ち着いた。


 今日は、長野駅集まり。

 若葉さんとは、研究会であるけど、蕾ちゃんと駅で集まるのは初めてだ。


 上田駅から電車に乗って、長野駅に向かう。

 今日は、電車で少し勇気を出してみた。

 前に駅で落としてしまったハンカチ(04参照)を、駅員さんにまだあるか尋ねてみた。

 駅は、一週間ほど忘れ物を管理して、その後、近くの警察署に行くのだそう。おそらく私が、1年ほど前に、落としたハンカチはもう、処分されているだろうとのこと。

 今から、動いたって戻ってこないものもある。取り返しがつかないこともある。

 だけど、それに打つのめされても、落ち込んでも、その後、前に進んでいけばいい未来が見えてくるはず。

 私は、苦しかった気持ちも、失ったハンカも越えて、蕾ちゃんと若葉さんと、研究会のみんなと、これから出逢っていく人と、大切な大切な、「最高」「幸せ」って思えるような思い出を作っていく。


 アリのように必死に。

 そして、トンボのように、立ち止まったり、後戻りしながら。

 シジミチョウのように、柔らかな青に染まった翅を自在に動かして、私は飛んでいく。

 遥か彼方まで。

 
 「うしないたくない。研究会のみんなと、もっと楽しいことをしたい。蕾ちゃんと若葉さんのことも、私を理解してくれた私の苦しい気持ちも理解してくれた進友(しんゆう)だから。その為に、力不足だけど、」必死に頑張りたい。 芽生」

 昆虫研究室の扉の横に飾られた新聞。安桜芽生の寄せ書きの端に、そう、書き込まれていた。

< 27 / 27 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

飛び込み自殺

総文字数/5,751

ミステリー・サスペンス1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2016年7月13日、田口友梨花が青崎駅にて死亡した。 自殺として処理された事件。 だか、ある怪奇現象を発端として、寄せ集まりの5人で事件の捜査を開始する。
曇天模様の空の下、俺は未だに生きている。

総文字数/27,049

恋愛(キケン・ダーク)31ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
俺の本当を知る唯一の人だった彩芽は、自殺した。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop