アリのように必死に。 そして、トンボのように立ち止まったり、後戻りしながら。 シジミチョウのように、柔らかな青に染まった翅を自在に動かして、私は飛んでいく。

03

空はオレンジ色に染まっていて、夕焼けの光を浴びた雲がきれいに輝く。

 私は朝、蕾ちゃんと会った場所にいた。時間は五時二十分。少し肌寒い陽気だ。

 「芽生さん」

 蕾ちゃんの声。

 私は、蕾ちゃんを待つ時間に考えていたクイズを早速出した。

 「クイズです。赤とんぼの基準は何でしょう?」

 「赤とんぼっていう種類はなくて、アカネ科に属するトンボのことを一般的に指す」

 「正解」
 百点満点の解答。

 「じゃあ、今度私から問題いいですか?」

 蕾ちゃんからのクイズ。

 「アキアカネのメスは何色をしているでしょうか?」

 「黄色。もともとアキアカネってのは、オスも黄色をしていたんだけど、オスはメスへのアピールのために赤くなる」

 その後も、クイズを出し合った。

 そして、勝利を手にしたのは、私。なんだか、誇らしい気分だ。

 「また、やろうね」


 「ごめん。遅れた~」
 約束の時間からに十分ほど過ぎた頃、若葉さんと奥谷君が走ってきた。

 朝、グループチャットを見ると、「冬の昆虫、見に行かない?」と、連絡が来ていた。

 大学の近くにある、あまり人気のない公園。草がそこら中に生えている。
 
 冬の昆虫は、樹木の近くにいることが多いからと、樹木の方へ足を進める。

 木の樹皮をそっとめくった。

 少し剥がれている樹皮の間にはカニグモがいることが多い。カニグモというのは、総称で、腹部が黄色く腹腔に黒い線があるという特徴的な共通点を持っている。

 めくると、やはりカニグモが隠れていた。樹木に似た色。写真を撮って少し触れてみる。こそばゆい感覚だ。
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