死ぬ前に後悔したくないからと婚約破棄されましたが、溺愛されました
 だめですよ、お腹に負担がかかりますから、さぁこちらに座って」

「ひゃぁっ!」

突然お姫様抱っこされて、トスンとベッドに寝かされていた。

「驚かせてしまったのなら、すみません。」

謝罪しながらも、がっちりとホールドした手は緩めない。
私は彼の腕を枕にして、囲い込むように抱きすくめられていた。


優しい手つきでお腹を撫でられて、安心する自分に驚く。

だって、こんな関係はよくない。
私は彼の名前すらしらない。
伯爵家の方だと知って、聞こうとしなかったから。

一夜の関係のつもりだったのに……。

きっと、貴族の矜持として責任を取ろうとしているだけ。彼が欲しいのは自分の血を受け継ぐこの子なのだろう。

こんな、町娘なんかと結婚するメリットなんてない。

婚姻届もフェイクだろう。
愛妾にならないかと言われるよりも、結婚しましょうと言われた方が浮かれて喜ぶとでも思っているのだろう。

庶民だからといって、軽く見られても困る。

愛妾になるくらいなら、一人でこの子を育てる道を選ぶ。


パン屋の給金だけでは正直苦しい。
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