鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~

朝を迎えて・2

 女医達が去って言って、鎖子は安堵のため息を漏らす。

「大丈夫か?」

「はい……」

「嫌な思いをさせたな」

「こんなことくらい、平気です」

「すまない」

 鎖子が微笑むと、要も安心したように微笑んでくれた。

 でもまた恥ずかしさで、下を向く。
 再会して、あまり話もしないままに抱かれて乱れ……。

 術は確かに発動されたようだが、初夜の務めを果たせたのかは鎖子にはわからない。

 ただ要に快楽を与えてもらって、溺れていただけなのでは……。
 要に呆れられてはいないだろうか?

 寝ぼけていた時に感じていた幸せは、すぐに流れて今は不安になってきてしまう。

 でも要に、『初夜の感想』なんて聞くことなんてできない。

 そして鎖子の最大の役目は、もう終わったのだ。

「俺達も、家へ帰ろう」

「は、はい」

 帰ろうと言ってもらえて、安心する。 

「帰宅後はすぐ、俺は任務へ行かなければいかないんだが、鎖子はゆっくり休め」

「えっ……もう任務へ?」

「あぁ」

「任務の級はいかほどの……」

「山中での上級妖魔の退治だから、上級任務だな」

「そ、そんな……だって要様は鎖の儀で……」

「あぁ、力は体感的に半分になったか。でも軍では少佐のままだ。任務は今まで通りにやってくる。金剛は、俺に早く死んでもらいたいんだろう」

「えっ!?」

「冗談だ」

「心配です」

「……俺の心配してくれるのか?」

「も、もちろんです」

「……そうか……」

 驚いた顔をした要を見て、鎖子も驚いた。
 何故、そんな驚く顔をするのだろう。
 妻として、愛する夫の心配をするのは当然なのに……。

 いや、この結婚に愛などなかった。
 自分が勝手に要を愛して、心配しているだけだった。
 昨夜の初夜も、『鎖の儀』という罰なのだ。
 愛し合う夫婦の営みなどではない。
 
「では、家へ帰る支度をしよう」

 でも要は優しかった。
 罰を執行して、きっと要に嫌われてすぐに捨てられるかもしれない。
 そう思っていたのに、要は鎖子を気遣い続け、連れられて一緒に九鬼兜家の屋敷に戻った。
 
 待っていた岡崎達に、軽く挨拶をして、鎖子の部屋までも送ってくれた。

 ただ鎖の儀が行われた部屋を出てからは、指一本、鎖子に触れることはなかった。
 
「無理せずに、ゆっくり休んでくれ」

「はい」

「それでは、俺は任務へ行ってくる」

「はい、要様……いってらっしゃいませ」

「……しっかり飯も食ってくれ。……それと、近いうちに御両親の墓へ報告に行こう」

「は、はい。ありがとうございます」
 
 優しく、慈しむような瞳。
 これから任務へ行く要を前に、鎖子は離れたくない寂しさで心臓が疼くのを感じてしまう。
 勘違いしてはいけないのに、また抱き締めてほしいと身体が疼く。
 
「では」
 
「は、はい。お帰りを、お待ちしております」

「俺の帰りなど、待たなくていい。自由に過ごして、ゆっくり休んでくれ」

「そんな……」

「俺のことなど気にするな。では行ってくる」
 
 要の気遣いは感じるが、肉体的な距離は遠く感じる。
 
 用済みの女を、屋敷に置いてくれるだけでも感謝しなければいけない。
 これから彼の妻として、どうしていけばいいのだろうか。
 
 でも要に抱かれて鎖子は……要への想いを強く再確認した。
 要のことがすごく好きで、愛していると――。
 
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