鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~
相談
鎖子の話を聞いた要。
二人は、要の部屋のソファで今までの事を整理する。
「鎖子の叔父が、柳善縛家の力を研究する研究員だった……驚いたな」
「……古い写真で、多分なのですが……」
「長年見てきた鎖子がそう感じたのなら、そうなのだろう。俺はお前を信じているよ」
いつでも自分を信じてくれる。
それがどれだけ嬉しいことか――。
鎖子が手を伸ばすと、要は強く鎖子の手を握り返してくれた。
「要様……叔父は、偶然に叔母と結婚したんでしょうか」
たまたま柳善縛家の研究員だった叔父が、たまたま柳善縛家の次女と結婚をした……?
「偶然とは思えんな……。むしろ全てが仕組まれていたとしたら……金剛のやつが、柳善縛家を研究させて、何かを掴んだ……そして柳善縛家の次女に近づき、二人で策略をした……」
要が言う話は、すんなり納得できてしまった。
あの二人は、愛し合う夫婦というよりお互いに利用し合っているように見えた。
愛蘭は叔父にも全然似ていない……。
鎖子の両親が亡くなって、叔母と夫の叔父に柳善縛家は乗っ取られた。
それは、金目当ての行為にしか思えなかったが……それ以上に深い理由があった?
「柳善縛家の力に……何か、もっと秘密があるのでしょうか……?」
鎖子から無意識に出た鎖のオーラに、要が優しく触れた。
「何を研究していたが知りたいが、俺が今動けばすぐに金剛の耳に入るかもしれないな……。今日の見学は、名前は残したのか?」
「見学者として署名してしまいました……軽率でした。すみません」
「いや、何か不正したわけでもない。その波野という男に許可されたのだから大丈夫だ。だが、金剛が俺達が何か掴んだと気付く可能性もあるな。今動くのは得策ではないか……」
「そうですよね。私が研究所に行ったことを知ったら……何か勘付いたかと思うかもしれません」
情報は得られたが、金剛や叔父に鎖子の動きが知られたら何か行動を起こす危険がある。
「金剛のやつ、九鬼兜家を滅ぼそうとしているのかとは思ったが、柳善縛家の何を知り、あいつらは何をしようとしている……?」
金剛の手先だった要の義母。
要は、義母を殺し、鎖子から鎖の儀を受けた。
そして九鬼兜家は五大家からも追放された。
しかし金剛家、金剛大将はこれまでも相当な権力を持っていたのだ。
そこまでして、要を追い詰める必要は一体なんだったのか……?
「あの男はこれ以上、何を望むつもりだ……将暉と鎖子を結婚させる? いや、また鎖子の力を利用して誰かの力を減退させるつもりか……? そんな事は絶対にさせない」
鎖子を他の男に抱かせる……?
柳善縛鎖子としての役目ではあるが、絶対にしたくない。
「私も絶対に他の人になど抱かれたくありません」
鎖子が縋り付くように、要の胸元に抱きついた。
「大丈夫だ。絶対に他の男になど触れさせるものか」
「それか何か柳善縛の減退させる力を使って、兵器を作ろうとしているとか……? できるかはわかりませんが……」
波太郎が、鬼人の力を増強する薬なども開発していると言っていた。
「あり得るかもしれないな。この計画……一体何十年前から計画されていたんだ」
「……叔父の動きを考えると……私の両親は……まさか、まさかあの事故は……」
鎖子は恐ろしいことを口にしてしまったと思った。
「そう思ってしまうよな」
「はい……」
「しばらく、鎖子は家から出ない方がいい。大学校には、体調不良という連絡をしてしばらく欠席するんだ」
「はい。要様の言うとおりにいたします」
「鎖子に手出しするつもりがあるかどうかはわからんが、何か嫌な予感がする」
「はい……要様も心配です。金剛将暉のあの言葉……」
何度も要がすぐに死ぬと言われた。
金剛の息子なのだから、何か知っていてもおかしくない。
「大丈夫だ。自分の身くらいどれだけ鬼妖力を減退させられようが守ることができる」
「はい」
「心配してくれるのは嬉しいよ。ありがとう……結婚指輪がもうすぐ完成するらしい。予定通りその日は外食しようか?」
「あの……考えていたのですが、その日は私が夕飯をお作りしてもよろしいですか?」
「俺は嬉しいが、鎖子が大変ではないか?」
「料理長とお話をしていて、是非特別な日に作ってみたい洋食があるのです」
結婚指輪が出来上がるのを、鎖子も楽しみにしていた。
だからこそ自分の手作りの料理で、要と祝いたい。
「鎖子がそうしたいのなら……」
「是非そうさせてください」
「わかった。では、あまり金剛達の事は考えすぎずに、屋敷でのんびり過ごしてほしい。非情を知って俺のような冷徹な鬼に鎖子にはなってほしくない」
「……要様は冷徹なんかじゃありません……誰よりも優しい御方です」
「鎖子だけにはな」
両親の事故が、もしも金剛や叔父達の策略だとしても……もう、証拠も何も残っていない。
訴えたところで、要と同じ運命を辿るだけ。
「また御両親の墓参りにも行こう。お前を幸せにすると、また誓う」
「要様……ありがとうございます」
九鬼兜家専属の医者に、極度の貧血と演習時に負ったと見られる頚椎捻挫という診断書を書いてもらい大学校へ長期の休暇届を出して受理された。
希美からすぐに心配の電話が来たが、『元気だが、ある事情で』との説明で安心したようだった。
そして要が数日かかる任務へ行く朝。
一枚の紙を鎖子に渡す。
「これを持っていてくれ」
「式神の護符ですね」
「そうだ。何かあれば、遠隔でお前を守る」
「任務をこなしながら、遠隔で式神を使ったら要様にかなりのご負担がかかってしまいます」
「俺の留守中に、お前に何かあった方が嫌だろう。負担など気にするな」
お互いに相手が一番大切で、譲らない。
それはもうわかっている事だった。
鎖子は護符を大切に、着物の胸元へ仕舞う。
「何もない事を祈っております。どうかご無事で帰ってきてくださいませね」
式神を使うことなく、要の帰りを待つ……。
しかしその三日後に、叔父が見舞いという名目で九鬼兜家屋敷に訪ねてきたのだ。
二人は、要の部屋のソファで今までの事を整理する。
「鎖子の叔父が、柳善縛家の力を研究する研究員だった……驚いたな」
「……古い写真で、多分なのですが……」
「長年見てきた鎖子がそう感じたのなら、そうなのだろう。俺はお前を信じているよ」
いつでも自分を信じてくれる。
それがどれだけ嬉しいことか――。
鎖子が手を伸ばすと、要は強く鎖子の手を握り返してくれた。
「要様……叔父は、偶然に叔母と結婚したんでしょうか」
たまたま柳善縛家の研究員だった叔父が、たまたま柳善縛家の次女と結婚をした……?
「偶然とは思えんな……。むしろ全てが仕組まれていたとしたら……金剛のやつが、柳善縛家を研究させて、何かを掴んだ……そして柳善縛家の次女に近づき、二人で策略をした……」
要が言う話は、すんなり納得できてしまった。
あの二人は、愛し合う夫婦というよりお互いに利用し合っているように見えた。
愛蘭は叔父にも全然似ていない……。
鎖子の両親が亡くなって、叔母と夫の叔父に柳善縛家は乗っ取られた。
それは、金目当ての行為にしか思えなかったが……それ以上に深い理由があった?
「柳善縛家の力に……何か、もっと秘密があるのでしょうか……?」
鎖子から無意識に出た鎖のオーラに、要が優しく触れた。
「何を研究していたが知りたいが、俺が今動けばすぐに金剛の耳に入るかもしれないな……。今日の見学は、名前は残したのか?」
「見学者として署名してしまいました……軽率でした。すみません」
「いや、何か不正したわけでもない。その波野という男に許可されたのだから大丈夫だ。だが、金剛が俺達が何か掴んだと気付く可能性もあるな。今動くのは得策ではないか……」
「そうですよね。私が研究所に行ったことを知ったら……何か勘付いたかと思うかもしれません」
情報は得られたが、金剛や叔父に鎖子の動きが知られたら何か行動を起こす危険がある。
「金剛のやつ、九鬼兜家を滅ぼそうとしているのかとは思ったが、柳善縛家の何を知り、あいつらは何をしようとしている……?」
金剛の手先だった要の義母。
要は、義母を殺し、鎖子から鎖の儀を受けた。
そして九鬼兜家は五大家からも追放された。
しかし金剛家、金剛大将はこれまでも相当な権力を持っていたのだ。
そこまでして、要を追い詰める必要は一体なんだったのか……?
「あの男はこれ以上、何を望むつもりだ……将暉と鎖子を結婚させる? いや、また鎖子の力を利用して誰かの力を減退させるつもりか……? そんな事は絶対にさせない」
鎖子を他の男に抱かせる……?
柳善縛鎖子としての役目ではあるが、絶対にしたくない。
「私も絶対に他の人になど抱かれたくありません」
鎖子が縋り付くように、要の胸元に抱きついた。
「大丈夫だ。絶対に他の男になど触れさせるものか」
「それか何か柳善縛の減退させる力を使って、兵器を作ろうとしているとか……? できるかはわかりませんが……」
波太郎が、鬼人の力を増強する薬なども開発していると言っていた。
「あり得るかもしれないな。この計画……一体何十年前から計画されていたんだ」
「……叔父の動きを考えると……私の両親は……まさか、まさかあの事故は……」
鎖子は恐ろしいことを口にしてしまったと思った。
「そう思ってしまうよな」
「はい……」
「しばらく、鎖子は家から出ない方がいい。大学校には、体調不良という連絡をしてしばらく欠席するんだ」
「はい。要様の言うとおりにいたします」
「鎖子に手出しするつもりがあるかどうかはわからんが、何か嫌な予感がする」
「はい……要様も心配です。金剛将暉のあの言葉……」
何度も要がすぐに死ぬと言われた。
金剛の息子なのだから、何か知っていてもおかしくない。
「大丈夫だ。自分の身くらいどれだけ鬼妖力を減退させられようが守ることができる」
「はい」
「心配してくれるのは嬉しいよ。ありがとう……結婚指輪がもうすぐ完成するらしい。予定通りその日は外食しようか?」
「あの……考えていたのですが、その日は私が夕飯をお作りしてもよろしいですか?」
「俺は嬉しいが、鎖子が大変ではないか?」
「料理長とお話をしていて、是非特別な日に作ってみたい洋食があるのです」
結婚指輪が出来上がるのを、鎖子も楽しみにしていた。
だからこそ自分の手作りの料理で、要と祝いたい。
「鎖子がそうしたいのなら……」
「是非そうさせてください」
「わかった。では、あまり金剛達の事は考えすぎずに、屋敷でのんびり過ごしてほしい。非情を知って俺のような冷徹な鬼に鎖子にはなってほしくない」
「……要様は冷徹なんかじゃありません……誰よりも優しい御方です」
「鎖子だけにはな」
両親の事故が、もしも金剛や叔父達の策略だとしても……もう、証拠も何も残っていない。
訴えたところで、要と同じ運命を辿るだけ。
「また御両親の墓参りにも行こう。お前を幸せにすると、また誓う」
「要様……ありがとうございます」
九鬼兜家専属の医者に、極度の貧血と演習時に負ったと見られる頚椎捻挫という診断書を書いてもらい大学校へ長期の休暇届を出して受理された。
希美からすぐに心配の電話が来たが、『元気だが、ある事情で』との説明で安心したようだった。
そして要が数日かかる任務へ行く朝。
一枚の紙を鎖子に渡す。
「これを持っていてくれ」
「式神の護符ですね」
「そうだ。何かあれば、遠隔でお前を守る」
「任務をこなしながら、遠隔で式神を使ったら要様にかなりのご負担がかかってしまいます」
「俺の留守中に、お前に何かあった方が嫌だろう。負担など気にするな」
お互いに相手が一番大切で、譲らない。
それはもうわかっている事だった。
鎖子は護符を大切に、着物の胸元へ仕舞う。
「何もない事を祈っております。どうかご無事で帰ってきてくださいませね」
式神を使うことなく、要の帰りを待つ……。
しかしその三日後に、叔父が見舞いという名目で九鬼兜家屋敷に訪ねてきたのだ。