選ばれるだけじゃ、終われない
5月号:カフェなふたり。
「これで今日は以上ですー、おつかれさまでしたー」
ディレクターの声が店内に響く。
きょうは雑誌の撮影日だった。
毎月の特集ページ「デートなふたり。」の撮影。
高校生ふたりが今ドキな最新ファッションでいろいろなところにデートに行く企画。
「おつかれー、色香。」
苺ドーナツをかじりながら話しかけてきたのは、
この特集の彼氏担当・清永舞(きよなが・まい)。
私がモデルを始めたのと同じ時にモデルになった
いわゆる同期的な存在。年齢も同じで、
芸能コースがある学校にいるから、学校も同じ。
気付けば7年ぐらい一緒にいるけどずっと仲良しで
たまにケンカもするけど、するほどなんとかってやつだから、
問題はない。
扱いやすいのか、ペアルックとかデート系の撮影は
一緒になることがとても多い。
「ん、色香も食べたら?」
舞くんが持ってきたもう一個の苺ドーナツを掴んだまま
こちらをじっと見る。
どうしようかなと戸惑っていると、半ば強引に口もとへ押し当ててきた。
「え、ちょ、ちょっと」
勢いのままひとかじりした瞬間、口の中に甘さが広がる。
「わっ、甘いー」
そう言って笑うと、舞くんがいつものようにくしゃっと笑って返してくる。
「色香、スイーツ食べないもんなー。撮影以外で」
舞くんは私にドーナツを食べさせて満足そうだ。
にんまり笑って残りのドーナツを食べている。
別にあえて食べてないわけじゃないけどー、
と言い返すと、そうだなーと返ってくる。
素で話せて、私のことをよく知ってる唯一の同い年。
遠くから、「色香ー!」と声が飛ぶ。
マネージャーの雅さんの声だ。
モニターチェックだから、急いで雅さんのところへ向かう。
カットを一緒に見ながらアドバイスをもらったり、
表現をすり合わせるのが毎度の仕事のひとつだ。
雅さんは私のデビューの時からずっとついてくれている、
私の専属マネージャー。
というか、私のお姉ちゃんの友人。
服飾の専門学校にいた雅さんは、
学生ながらすでにファッション業界でアルバイトをしていて、
私を着せ替え人形のようにしてモデルにしていた姉が、
「この子をモデルにできないか」と相談したのがはじまり。
私も服をいろいろ着るのは楽しかったし、
写真をたくさんの人に褒められるのが嬉しかった。
それが気付いたらもう7年。
ディレクターの声が店内に響く。
きょうは雑誌の撮影日だった。
毎月の特集ページ「デートなふたり。」の撮影。
高校生ふたりが今ドキな最新ファッションでいろいろなところにデートに行く企画。
「おつかれー、色香。」
苺ドーナツをかじりながら話しかけてきたのは、
この特集の彼氏担当・清永舞(きよなが・まい)。
私がモデルを始めたのと同じ時にモデルになった
いわゆる同期的な存在。年齢も同じで、
芸能コースがある学校にいるから、学校も同じ。
気付けば7年ぐらい一緒にいるけどずっと仲良しで
たまにケンカもするけど、するほどなんとかってやつだから、
問題はない。
扱いやすいのか、ペアルックとかデート系の撮影は
一緒になることがとても多い。
「ん、色香も食べたら?」
舞くんが持ってきたもう一個の苺ドーナツを掴んだまま
こちらをじっと見る。
どうしようかなと戸惑っていると、半ば強引に口もとへ押し当ててきた。
「え、ちょ、ちょっと」
勢いのままひとかじりした瞬間、口の中に甘さが広がる。
「わっ、甘いー」
そう言って笑うと、舞くんがいつものようにくしゃっと笑って返してくる。
「色香、スイーツ食べないもんなー。撮影以外で」
舞くんは私にドーナツを食べさせて満足そうだ。
にんまり笑って残りのドーナツを食べている。
別にあえて食べてないわけじゃないけどー、
と言い返すと、そうだなーと返ってくる。
素で話せて、私のことをよく知ってる唯一の同い年。
遠くから、「色香ー!」と声が飛ぶ。
マネージャーの雅さんの声だ。
モニターチェックだから、急いで雅さんのところへ向かう。
カットを一緒に見ながらアドバイスをもらったり、
表現をすり合わせるのが毎度の仕事のひとつだ。
雅さんは私のデビューの時からずっとついてくれている、
私の専属マネージャー。
というか、私のお姉ちゃんの友人。
服飾の専門学校にいた雅さんは、
学生ながらすでにファッション業界でアルバイトをしていて、
私を着せ替え人形のようにしてモデルにしていた姉が、
「この子をモデルにできないか」と相談したのがはじまり。
私も服をいろいろ着るのは楽しかったし、
写真をたくさんの人に褒められるのが嬉しかった。
それが気付いたらもう7年。